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モンスターペアレントへの対応

学校に対する保護者クレームの中には、声を荒げる、答えに窮する質問をしてくる、脅す、物を投げる、暴力を振るう等の方法を繰り返し、理不尽な要求を突き付けてくるケースがあります。

このようなモンスターペアレントによるクレームに長期間対応していると業務が滞ってしまうばかりか、精神的に疲弊してしまうため、判断力や思考力等が奪われてしまいます。時には教職員が病んでしまい退職に追い込まれるケースや、悪影響が学校全体に広がってしまうケースもあるため、組織的な危機管理として捉えることが大切です。

今回はモンスターペアレントの基本を解説した上で、常識が通用しないモンスターペアレントへの対応に伴う牽制方法のポイントをお伝えしたいと思います。

 

 

 

◆モンスターペアレントとは

モンスターペアレントは、教育機関に対して、常識の範疇を超えた要求を繰り返し行う保護者を指す和製英語です。

 

モンスターペアレントの問題は決してマイナーではなく、ニュースや新聞でも度々報じられ、ドラマになったこともあります。モンペと略されることも多いです。

 

 

 

◆モンスターペアレントの特徴

モンスターペアレントには特徴があります。我々が考えるモンスターペアレントの特徴として代表的なものが「自己中心タイプ」と「病的タイプ」の2つです。
 

 

自己中心タイプ

代表的なモンスターペアレントの特徴の1つが自己中心タイプです。自分の利益だけを考えて、学校に過度な要求をしてきます。もちろん、学校やクラスの方針についてはあまり考えることもありません。なお、自己中心タイプのモンスターペアレントには、具体的に以下のような傾向があります。

 

 

・自分自身あるいは子供を中心に考えている

自分自身あるいは子供を中心として、要求をしてくるケースです。
他者への配慮が全く無く、自らの利益のみを考えています。行き過ぎたケースだと、強要罪に該当するおそれのあるような、学校に義務の無いことを強硬に求めてくる場合もあります。
例えば、A小学校では自ら学ぶ姿勢を育む、という方針をとっていたとします。その方針に不満を持ったBさんは、我が子には自主的に学ばせる教育方法は合っていないので成績が伸びない。今後、自宅に担任が来て毎日宿題を教えて欲しいと過度な要求をしてきました。この場合、Bさんは我が子だけのことだけを考えていて、明らかに担任や周囲への配慮に欠けています。Bさんは我が子のことを思っているという自己満足感や我が子から親として認められたいとの思い、時には担任への恨みの感情等から、執拗な要求をしてくるのかもしれません。

 

 

・権利を過度に主張する

保護者という権利を悪用して、過度に要求をするケースです。行き過ぎたケースでは、法律に抵触するケースもあります。

例えば、給食のメニューや量が、支払っている給食費に釣り合わないという要求をしてくるケースがあります。この場合、給食費を支払っているという消費者的な立場を悪用して、学校の給食体制に常識の範疇を超えた要求をしています。
C中学校では、ゲーム機をはじめとした娯楽用品の持ち込みは校則で禁止されていました。生徒の1人であるDは、ゲーム機を学校に持ち込んだことが発覚したので、校則により没収されてしまいます。(帰宅時に返却)そのことに目をつけたDの親は、ゲーム機の代金を返してほしいと、地元の議員を使い、無茶な要求をしてきました。この場合も、権利の過度な主張に該当するのではないでしょうか。

 

 

・暴言や暴力を振るう

教員をはじめとした教育機関の関係者に対して暴力を振るったり、暴言を吐いたりする保護者もモンスターペアレントと言えると思います。このような行為は法律に触れる可能性があります。
このタイプのモンスターペアレントには感情の起伏が激しい人が多く、学校に対して不満があると、すぐに暴力的な言動をとるので注意が必要です。

 

 

 

病的タイプ

代表的なモンスターペアレントの種類の2つ目が病的タイプです。何らかの病気やストレス等の原因により、モンスターペアレントになる人も少なくありません。そのような人の多くは、以下のような特徴があります。

 

 

・言いがかりをつける

言いがかりをつけるタイプのモンスターペアレントは、「起こってもいない出来事をまるで実際に起こったかのように話す」、「意見を頻繁に変える」、「平気で嘘をつく」等の行動を起こすことが多いです。

 

例えば、生徒の保護者であるEさんが、F中学校では教師が生徒に給食を与えない、という主張してくるケースです。もちろん、F中学校では教師が生徒に給食を与えていない、という事実はありません。

 

このように、実際に起こっていない出来事をまるで実際に起こっているかのように主張する人には、精神的な病を患っている傾向にあります。悪意があるわけではないケースもあるので、教員としては慎重な対応をする必要があります。

 

 

・学校に依存する

本来、親が行うべきことを学校に要求するタイプです。

 

例としては、「昼食は弁当である学校に対して給食を用意してほしいと主張する」、「子供の送迎を学校側がしてほしいと主張する」等が挙げられます。このように親として自立できていない人が、学校に依存するタイプのモンスターペアレントと化した状態です。

 

このような背景には様々な病気が隠れている場合もあるため、学校だけでの対応は難しくなってきます。

 

 

 

◆対応前の事前準備

まずは、モンスターペアレントと対峙する前にあらためて事実確認をするとともに、以下の準備をすることが大切です。

 

 

➀気持ちの準備

・相手にコントロールされない意識を持ち、ストレス管理に有効な休息を仕組み化しておく
 

 

②目標の明確化

・着地点を決めてそこに向かうために言動を選択し、感情で判断をしない

 

 

③相手を知ること

・情報収集をして相手を見立ててから方針を決定する

 

 

 

◆モンスターペアレントに関連する犯罪を理解する

次に関連する主な犯罪を知っておくことが大切です。
このことが対応時の判断に役立ってきます。(下図参照)
 

 

 

 

犯罪
脅迫罪 「先生も大変だね、早く解決しないと家族にまで迷惑をかけることになって困るんじゃないの?」
・殺すぞ ・殴るぞ(真似も) ・帰れなくしてやる ・世間に公表してやる(内容による)
恐喝罪 ・金銭、財物の要求「当然、然るべき対応をしてくれるだろうね?」(内容による)
建造物侵入罪・
不退去罪
・正当な理由が無いのに許可なく学校に入ってきた場合。
保護者の場合は「正当な理由がない」とは言えない。
・退去を促しても居座る場合は不退去罪
暴行罪 ・殴る ・蹴る ・物を投げ付ける(当たらなくても)
器物損壊罪 ・学校のドアを蹴って壊す ・備品を壊す
強要罪 ・土下座をさせるなど、する義務がないことをさせること ・取り囲んで無理やり謝罪文を書かせる
偽計業務妨害罪・
威力業務妨害罪
・度重なるいたずら電話やネットでの犯罪予告など
・教員を取り囲んで業務を妨害する

 

 

 

◆対応時の注意事項

モンスターペアレントが来訪する場合は相手よりも多い人数で対応することが大切です。

 

 

①(電話)基本的に保護者以外と話をしない

・第三者とは話さない旨を伝える(弁護士と名乗ってきても同様=身分が不明。)

 

 

②記録を残す

・録音可能電話機、ビデオカメラ、ICレコーダー

 

 

③(来訪)門外漢への同行者への対応

・牽制し、基本的に会わない。情報収集(名刺を受け取るが約束が無いので話をしない。)

 

 

モンスターペアレントとの話し合いになった際は、その一部始終をICレコーダー等で記録することが時には必要です。

例えば、相手が録音する旨を告知してきたら、「学校としても記録に間違いが無いようにしたいので、同様に録音させて頂きます。」と怯むことなく対応する方法があります。これは相手の勢いを抑える効果があります。一方、相手が録音していないと思われる状況においても、学校がメモ代わりに常時録音をしておくことで、後の違法性の証明に役立つ場合があります。
その際に録音の断りを入れる必要はありません。録音の目的は相手の犯罪に繋がる言動を証拠として記録することです。相手に断わりを入れると、関係性を更に悪化させるばかりではなく、目的の実現が遠のいてしまいます。
また対応する際は複数人が原則です。相手は、教員が強く言い返せないことを利用して要求を通そうとしてきます。その際、複数人で対応すると、相手からの心理的な圧迫感を軽減させることが可能です。また、第三者の意見があることで、お互いに冷静な判断がしやすくなるものです。
どのような理由があるにせよ、学校がモンスターペアレントから暴力や暴言、脅迫や強要等を甘んじて受け続ける理由はありません。違法性が認められる場合やその判断がつかない場合には、児童生徒の問題とは全く別の問題として、相手に屈することなく、早めに警察に相談するとよいでしょう。

 

 

 

◆相手と対峙するために知っておきたいこと

モンスターペアレントと対峙する時に「何を話すか?」も大切ですが、「どのように話をしたのか?」の方が牽制機能を高めることができます。

 

 

態度 冷静に、相手の目を見る、姿勢を正す
言葉 語尾まではっきり、曖昧にしない、
声を大きく、一歩踏み込む=勇気
気持ち 心穏やかに、怯まない、
常に強気で(逃げない)、挑発にのらない

 

 

 

◆知っておきたい牽制時のフレーズ

モンスターペアレントと話をする時には毅然とした振舞いで対応することが大切です。
①相手が大声で怒鳴ってくる場合

  • ・私たちへ恐怖心を与える事が目的なのですか?それとも冷静に子供のために話をすることが目的なのでしょうか?その点をはっきりさせていただけませんか?
  • ・恐怖心を感じるので暴力的な言動はお控え下さい。
  • ・声のトーンを少し下げて頂けませんか?そうでなければ話し合いはできかねます。

 

 

②相手が脅迫し、無理な要求を通そうとしてくる場合

  • ・私には意思決定の自由がありますが、〇〇さんは、私の意思決定の自由を奪おうとしているのでしょうか?
  • ・学校を脅迫していると理解してよろしいでしょうか。
  • ・恐怖心を与えて、私たちに義務のないことを実行させようと、強要しているのではないですよね?

 

 

③相手が業務を妨害してくる場合

  • ・(公立)私たちは公的な身分があり、法律で定められた業務を行っております。その業務を妨害なさるおつもりではないですよね?
  • ・(私立)私たちは学校で定められた業務を行っております。その業務を妨害なさるおつもりではないですよね?

 

 
今回は牽制方法についてのポイントをお伝えいたしましたが、ごく一般的なクレームには親切丁寧に対応することが原則です。そのことを忘れずにいてください。その上で、過度なクレームは拒否し、法的な要素を踏まえた今回の牽制方法を頭の引き出しに入れておき、原則が通用しない時に思い出して頂ければと思います。

 

 

ポイント1 義務でないことに応じる必要はない!
ポイント2 学校に落ち度がある場合でも、違法性が
ある言動は全く別問題として対応する!

 

 

 

◆重要な事

モンスターペアレントは教育機関において重大な問題の1つです。この問題を容認しておくと、教員だけでなく児童・生徒にまで危害が及んでしまいます。

 

実際にこの記事を書いている学校リスクマネジメント推進機構は平成17年の創業から何度もこのようなケースの相談に応じているので、問題が大きくなる前に正しい対応をすることの必要性を実体験から理解していますし、問題が大きくなった際の解決策も知っているのです。

 

モンスターペアレントに対峙して問題解決をするためには、法律的な知識だけでは足りません。そこを理解していないと時に法律論が問題解決を遠ざけてしまうことさえあるのです。

 

重要なことは「クレーム対応と問題解決は違う」ということを理解することです。学校はクレーム対応をしながら、本質的な問題解決の手段を講じなければいけません。

 

現実的には警察的な知識や心理学的な知識、また、高度なコミュニケーションスキルや応対者のメンタル保持の必要性に加え、組織防衛の視点も必要になってきますし、臨時保護者会の開催ノウハウが必要なケースもあるのです。

 

一方、モンスターペアレントと化した保護者に上記の対応をしたとしても、目の前の児童・生徒等の人間関係に最大限配慮することや、解決策はそもそも教育の範疇ではなく療育に答えがある可能性にも言及できる視点が必要です。

 

保護者の背後には児童・生徒がいることを忘れず、健全育成の視点や保護者の監護能力も併せて考慮することも大切な要素となります。
保護者をけん制しながら関係者全員で連携し、子どもたちのために決して屈することなく対応する気概と多様な専門領域のノウハウが求められるのです。

 

ところで、あなたが「発達の問題」に知識がある教員の場合、モンスターペアレント問題の裏側にはこの要素が隠れていることが少なくない現状も理解しているはずです。

 

このようにモンスターペアレント問題を解決するためには、限られた1つの専門領域からアプローチするのではなく、問題解決に効果のある複数の専門領域を見立て、それをアレンジしながら児童・生徒に配慮したアプローチが大切なのです。

 

 

モンスターペアレント問題を解決する

 

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学校リスクマネジメント推進機構

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この記事は当機構が制作・発行している「学校リスクマネジメント通信」をWEB版として編集し、大幅に加筆したものです。


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