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保護者クレーム対応 初期対応 実践編➀

今回の学校リスクマネジメント通信は、保護者クレーム対応 初期対応 実践編①です。
前号は初期対応の考え方について説明をさせて頂きました。内容をまとめると、初期対応の際の保護者は「怒っている状態」にあるので判断力や理解力が無く、理性より本能優位の特徴があるということ。つまり正しくメッセージを受け取れる状態ではないことをお伝えしました。そして今回は保護者に、初期対応の着地点である「普通の状態=正しくメッセージを受け取れる状態」になってもらうための方法を説明したいと思います。

◆ クレーム対応に目標を設定する


クレームの初期対応には原理原則があります。簡単に言うと「上手くいきやすい方法」ということになりますが、まずはクレーム対応の行き先を短期目標として設定することが非常に大事になってきます。
その短期目標とは「クレームを拡大させない」ということです。これは保護者のファーストコンタクトのクレームの状況よりも事態を悪化させないということです。
このことが意識できるようになると、自らの言葉や振る舞いが設定した目標から遠ざかっているということを対応途中でも認識しやすくなります。要するに自分自身で思考環境を整備するのです。たとえば、自分が保護者を攻撃し、絶対に言い負かしてやろう!という感情的な考えが芽生えても、目標を意識していれば、この振舞いは相手を怒らせるだけで、設定した目標から大きく外れる結果を招く可能性があるということを対応中に認識しやすくなるので、感情のコントロールに役に立つのです。
※本稿では中期・長期目標については割愛させて頂きます。

◆ 初期対応の三原則


目標を設定したら、次にそれを実現するために必要な次の手段を実行していきます。

1. 限定的な謝罪
これは責任論以外の謝罪のことを言います。例えば、学校で生徒が怪我をした責任が自分にあるかが判明していない段階で、その責任を認めて謝るのではなく、発生した出来事、また、不安を感じさせてしまったこと、さらには学校へ来ていただいて時間を取らせてしまったこと…などに対して限定的に行う謝罪です。

原因不明の段階で責任論を認めた謝罪をしてしまうと後で問題になることがありますが、謝罪をしないと逆に状況が悪化することが多いのです。
このようなことから責任論に言及しない限定的な謝罪を手段として講じるのです。勿論、自分のミスが原因でけがをさせてしまったことが明白な場合は、責任を認めて人として謝罪をすることが大切です。それが結果的に事態の悪化を防ぐことに繋がっていきます。
具体的な言い方の例としては、「学校でこのようなことが起こってしまい申し訳ありません」「この度はご心配をおかけしてしまい申し訳ございません」などの方法です。どれも責任論には言及していませんが、しっかりと謝罪は行っています。

自分が悪いかどうかもわからない段階で、なぜ謝罪をしなければいけないのか? との疑問が湧く方もいるかと思いますが、「クレームを拡大させない」という「目標を達成するための手段」と考えると意外に謝罪のハードルは下がるものです。私の経験上、保護者クレームの8割以上は限定的な謝罪で解決すると思っています。(但し、謝り方が大切です。

一方、限定的な謝罪をした際に、たとえば学校でケガをした生徒がいて、その保護者から「謝るという事は法的な責任を認めるのだな。責任を取れ。」などと言われた場合には、「私は、お子さんをお預かりしている学校の中でケガが発生してしまった事に対し、また、ご心配をお掛けしてしまったことに対して、謝罪をさせて頂いた次第です。」等と答え、それでも執拗に責任を追及してくる場合には、「私に法的な責任があるのであれば、それが明確になった時点で適切に対応させて頂きたいと考えております。」と答える方法もあります。また、「具体的に、私にどのような法的責任があるとお考えですか?」と逆質問することも相手によっては効果的です。大切なことは悪意が見え隠れしている保護者には「押し込まれない」ということです。

2. 話を聴く
決して話の腰を折らず、聞き役に徹してください。することは質問だけです。
相手が間違っていて論理性に欠けていたとしても、その誤りや矛盾を指摘してはいけません。相手の話をじっくり聞くことで、「この先生は話を聴いてくれる」「悪い人ではないのだな」というように感じてくれることが多いのです。また、話を聞くことの効果は2つあります。1つは何故怒っているのかという原因部分の情報量が増えるということ。そうなることで学校が提示する解決策の精度が高くなります。2つ目は相手がスッキリするということです。とにかく話を聞くことで相手の感情が沈静化するのです。業務に支障が出る場合は別に方法がありますが、初回はじっくり話を聞くことが大切です。一歩踏み込んで能動的に聴いてください。

3. 言い訳をしない
怒っている状態の保護者に対しては説明をするべきではありません。どんなに正確な説明だとしても、それが保護者には言い訳として伝わってしまうからです。「怒っている状態」の人は、判断力や理解力が無いばかりか、本能優位な状態であることから、その指摘が事実であればある程、相手を追い込んでしまうこともあるのです。そうなると防衛本能を刺激するため、逆に攻撃されてしまいます。説明は相手が「普通の状態」になってからすることが大切です。



◆ クレームへのお礼


ひととおり話を聞き終えたら、「貴重なご指摘をいただきありがとうございました」「気付きませんでした。大変勉強になりました」など、自身のキャラクターや話の内容に合わせたお礼を言うと、保護者が満足度を高める傾向があります。怒りが残っている保護者もお礼を言われると、これ以上怒り続ける事ができなくなるものです。相手の自尊感情を高め、結果的に両者の信頼関係を深める良策になるのです。また忘れないでほしいことは、「クレームは宝の山」ということです。どのようなクレームにも学べるところはあるのです。クレームを学校や自分の改善点を見つける機会だととらえることで、心からお礼を言える日が来ると良いと思います。
ハードなクレーム程、嘘でもお礼を言いたくない感情があると思いますが、お礼を言うことでこれまでの状況が変わることが多いものです。保護者対応の基本を詳しく学びたい方は「すごい!保護者クレーム対応マニュアル」を参考にすると理解が深まると思います。
https://www.relief-point.co.jp/book3/index.html



この記事は当機構が制作・発行している「学校リスクマネジメント通信」をWEB版として編集したものです。


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