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学校リスクマネジメント推進機構|学校と教職員向け危機管理相談
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鈴木彰典 元 校長 / 教職員を守る学校へ ~カスタマーハラスメント防止措置の 義務化で私立学校が今すぐ備えること~

鈴木彰典(学校リスクマネジメント推進機構)です。私は過去に校長経験が13年あり、マスコミが注目していた教育困難校の立て直しを任されてきた経歴もございます。このような学校では報道される内容と実情が全く異なることもあるのですが、様々な経験が今の学校現場の支援に活かされていると感じております。

 

さて、令和7年6月、改正労働施策総合推進法が公布されました。この改正により、令和8年10月1日から、事業主にはカスタマーハラスメント防止のために雇用管理上必要な措置を講じることが義務付けられます。この法改正は、一般企業だけでなく、私立学校や学校法人(以下、「私立学校等」)も対象になります。本号では、法改正を踏まえて、私立学校等で備えることについて情報提供いたします。

 

 

学校も「教職員を守る責任」を負う時代

 

学校には、保護者や地域と協力しながら子どもたちを育てていくという大切な役割があります。そのため、保護者からの相談や要望に耳を傾けることは欠かせません。しかし、すべての要求に際限なく応じ続けることが「誠実な対応」であるとは限りません。厚生労働省は、カスタマーハラスメントを「社会通念上許容される範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されること」と示しています。

 

保護者のご意見やご要望には、学校として丁寧に対応しなければなりません。一方で、その対応によって教職員が疲弊し、授業や子どもたちへの支援に影響が及ぶようであれば、本来守るべき教育活動そのものが損なわれてしまいます。これまで学校現場では、「学校だから仕方がない」「保護者との関係を悪化させてはいけない」という思いから、教職員が一人で抱え込み、長期間対応を続けてしまうことが少なくありませんでした。

 

今回の法改正は、そのような対応を見直し、教職員を守ることを私立学校等の重要な責務として位置付ける契機となります。

 

〔私立学校等が確認したいポイント〕

私立学校等としてカスタマーハラスメントへの基本方針を策定しているか。

学校長だけでなく、法人本部や理事会も制度の趣旨を共有しているか。

教職員を守ることを学校経営の重要課題として位置付けているか。

 

 

学校としての対応方針を明確にする

 

法改正を受けて、私立学校等が最初に取り組むべきことは、カスタマーハラスメントに対する基本方針を明文化し、保護者や地域へ周知することです。

 

これまでの学校では、「何が正当な要望で、どこからが学校として受け入れられない行為なのか」が曖昧なまま対応しているケースが多く見られました。しかし、基準が曖昧であるほど、教職員によって対応が異なり、保護者との間に「前回は対応してもらえたのに、今回は対応してもらえない」といった新たな不信感が生まれることがあります。学校は、「保護者の声には真摯に耳を傾けます。しかし、教育活動や教職員の安全を損なう行為には組織として対応します」という姿勢をあらかじめ示しておくことが重要です。

 

また、対応方針には、学校として受け入れられない行為を具体的に例示すると分かりやすくなります。

 

例えば、「長時間に及ぶ電話や面談の要求」「同一内容の執拗な繰り返し」「暴言や人格否定」「威圧的な言動」「教職員個人への執拗な連絡」「SNS等による誹謗中傷」などが考えられます。こうした内容をホームページや保護者向け資料、入学時の説明などで周知しておくことで、学校と保護者が共通の認識を持ちやすくなります。これは、保護者との対立を生むためではありません。むしろ、学校が誠実に対応する範囲を明確にすることで、良好な信頼関係を築きやすくするための取組です。

 

〔私立学校等が確認したいポイント〕

□学校としての対応方針を文書化しているか。

□学校ホームページ等で公表しているか。

□入学時や保護者説明会などで周知しているか。

□教職員全員が共通の対応基準を理解しているか。

 

 

教職員を守る校内体制を整える

 

カスタマーハラスメント対策は、対応方針を作成して終わりではありません。実際に保護者等から厳しい要求を受けたとき、教職員を守る仕組みが機能しなければ、制度は形だけのものになってしまいます。

 

学校現場では、「まず担任が対応する」という場面が少なくありません。しかし、担任一人で抱え込む状態が続けば、精神的な負担が大きくなるだけでなく、授業や学級経営にも影響が及びます。そのため、学校は、「教職員個人が対応する」のではなく、「組織として対応する」という考え方へ転換することが重要です。

例えば、保護者から繰り返し電話が続く場合には、一定の段階で管理職が対応を引き継ぐ仕組みを設けることが考えられます。また、長時間の面談についても、複数の教職員で対応し、記録を残すことを原則とするなど、学校としてのルールを定めておくことが望まれます。さらに、相談内容や対応経過を記録する様式を統一し、校長、教頭、法人本部が必要な情報を共有できる体制を整えておくことも重要です。対応が長期化するおそれがある場合には、当機構を含め、顧問弁護士や警察などの関係機関と連携する基準をあらかじめ定めておくことも欠かせません。

 

教職員研修も重要です。制度を知っているだけでは適切な対応はできません。「どこまでが正当な要望なのか」「どの段階で管理職へ引き継ぐべきか」「記録はどのように残すのか」などについて共通理解を図ることで、学校全体として落ち着いた対応が可能になります。

 

〔私立学校等が確認したいポイント〕

□教職員が相談できる窓口を設けているか。

□管理職へ報告・引継ぎを行う基準を定めているか。

□面談や電話対応のルールを明文化しているか。

□対応記録の様式を統一しているか。

□顧問弁護士や警察との連携方法を確認しているか。

□管理職・教職員を対象とした研修を実施しているか。

 

【危機管理の視点】

制度は整備するだけでなく、機能する体制づくりが重要です。

 

 

学校の事故、トラブル

 

 

教職員を守ることが子どもたちを守る

 

今回の法改正は、「保護者対応を厳しくするため」の制度ではありません。教職員が安心して教育活動に専念できる環境を整え、子どもたちにより良い教育を提供することを目的とした制度です。学校は、保護者や地域との信頼関係を築きながら教育活動を進める役割があります。一方で、教育活動を著しく妨げる行為や、教職員の人格や尊厳を傷つける行為については、私立学校等として毅然と対応することも必要です。

 

教職員が安心して働ける学校は、子どもたちも安心して学べる学校です。本号の内容は、私立学校等だけでなく、国公立学校にも当てはまることがあります。今回の法改正を契機として、学校全体の危機管理体制を見直し、教職員と子どもたちの双方を守る学校づくりを進めていただければ幸いです。

 

 


※この記事は当機構が制作・発行している「学校リスクマネジメント通信」をWEB版として編集したものです。

 編集者 元公立小学校・中学校 校長 鈴木彰典

 

 


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