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子どもの安全

鈴木彰典 元 校長 / 子どもの命を守るために ~夏季休業前に再確認したい 学校の安全管理体制~

鈴木彰典(学校リスクマネジメント推進機構)です。私は過去に校長経験が13年あり、マスコミが注目していた教育困難校の立て直しを任されてきた経歴もございます。このような学校では報道される内容と実情が全く異なることもあるのですが、様々な経験が今の学校現場の支援に活かされていると感じております。

 

さて、学校現場において、絶対に起こしてはならない事故があります。それは、児童生徒等の命が失われる事故です。学校は教育活動を行う場であると同時に、子どもたちの生命と安全を守る場でもあります。いかに優れた教育活動を展開していても、子どもたちの命が守られなければ、学校としての責任を十分に果たしているとは言えません。本号では、夏季休業前に問われる学校の安全管理体制に焦点を当てて、情報提供いたします。

 

 

夏季休業前に問われること

 

夏季休業前は、学校の安全管理体制と危機管理意識が問われる重要な時期です。長期の休みに入ると、児童生徒等は学校の直接的な管理下を離れ、家庭や地域、インターネット空間など、さまざまな環境の中で生活することになります。学校が子どもたちの様子を日常的に把握することが難しくなるからこそ、休業前の段階で、どのような危険を予見し、どのような指導と体制整備を行うかが極めて重要になります。

 

今年も、学校の安全管理や危機管理対応の在り方が問われる事故・事案が発生しています。こうした事故・事案は、決して特定の学校だけの問題ではありません。どの学校においても、「自校では起こらない」と考えるのではなく、「同じような危機が自校で起きた場合に対応できるか」という視点で受け止める必要があります。

 

学校危機管理の基本は、発生後の対応だけではありません。むしろ重要なのは、危機を未然に防ぐための「リスクの予見」「体制の点検」「実践的な訓練」「継続的な改善」です。夏季休業前の安全指導も、単なる生活指導として終わらせるのではなく、学校の安全管理体制全体を確認する機会として位置づけることが求められます。

 

 

学校保健安全法に基づく学校の責任

 

学校安全を考える上で、まず確認しておきたいのが学校保健安全法の視点です。同法は、学校における児童生徒等の安全の確保を図るため、学校安全計画の策定や危機管理マニュアルの整備などを求めています。つまり、学校安全は、各教職員の経験や善意だけに委ねられるものではありません。学校として組織的に取り組むべき法的・制度的な責務です。

 

学校安全計画は、年間を通じてどのような安全教育、安全管理、組織活動を行うのかを明確にするものです。また、危機管理マニュアルは、事故や事件、災害、不審者侵入、児童生徒の行方不明、重大なけが、水難事故、熱中症、アナフィラキシーショック、SNSを介した犯罪被害など、危機が発生した際に、教職員が円滑かつ的確に対応するための基本となるものです。

 

ここで重要なのは、作成しているだけでは不十分だということです。マニュアルは、実際に機能して初めて意味を持ちます。どこに保管されているかを一部の教職員しか知らない、内容が何年も見直されていない、訓練が行われていない、役割分担が曖昧であるという状態では、危機発生時に学校組織として対応することは困難になります。

 

夏季休業前には、児童生徒等への指導と併せて、学校安全計画と危機管理マニュアルの内容を確認し、現在のリスクに対応できているかを点検する必要があります。

 

 

学校の事故、トラブル

 

 

夏季休業中のリスクを捉える

 

文部科学省は、学校安全の領域として「生活安全」「交通安全」「災害安全」の3領域を示しています。夏季休業前の安全指導においても、この3領域を意識することで、指導内容の偏りを防ぎ、学校として包括的な安全管理を行うことができます。

 

【生活安全】

生活安全には、校内外での事故防止、不審者対応、犯罪被害防止、SNSトラブル、性被害、いじめ、自殺予防などが含まれます。夏季休業中は、子どもたちが家庭や地域、商業施設、インターネット空間などで過ごす時間が長くなります。そのため、学校内だけを想定した安全管理では不十分です。

 

近年、特に注意が必要なのがSNSを介した犯罪被害です。児童生徒等がSNSやオンラインゲームを通じて知り合った人物と接触し、性被害や誘拐、金銭トラブル、闇バイトへの勧誘、特殊詐欺への加担に巻き込まれる事例が発生しています。

 

これらは、従来の生活指導だけでは対応しきれない現代型リスクです。学校は、児童生徒等に対して「知らない人についていかない」という従来型の指導に加え、「ネット上の相手を安易に信用しない」「個人情報や写真を送らない」「怪しい誘いには応じない」「困ったときは大人に相談する」という具体的な行動指針を示す必要があります。

 

【交通安全】

夏季休業中は、外出や部活動、塾、友人との交流などにより、自転車や徒歩で移動する機会が増えます。特に自転車事故は、児童生徒自身が被害者になるだけでなく、加害者となる可能性もあります。

 

学校としては、ヘルメット着用、交差点での一時停止、ながらスマホの禁止、イヤホン使用の危険性、夜間のライト点灯、反射材の活用などを具体的に指導することが重要です。また、単に「交通ルールを守りましょう」と伝えるだけでなく、なぜその行動が命を守ることにつながるのかを理解させる必要があります。

 

【災害安全】

夏季は、台風、集中豪雨、落雷、河川の増水、土砂災害、猛暑など、自然災害や気象災害が発生しやすい時期です。水難事故や熱中症も、災害安全と密接に関わる重要な課題です。特に河川は、上流での降雨により短時間で増水することがあります。晴れているから安全とは限りません。また、近年の猛暑により、熱中症は学校管理下だけでなく、家庭や地域での活動中にも重大なリスクとなっています。児童生徒等には、暑さ指数や気象情報を確認すること、無理な運動を避けること、体調不良時にはすぐに周囲へ知らせることを指導する必要があります。

 

 

保護者・地域・関係機関との連携

 

子どもの命を守るためには、学校だけで完結する安全管理には限界があります。特に夏季休業中は、家庭や地域との連携が不可欠です。

 

学校は、保護者に対して、単なるお願い文書を配布するだけでなく、保護者会や学校だより、各種配信システムなどを活用して、具体的な危険情報と家庭で確認してほしい事項を伝える必要があります。また、教育委員会(公立の場合)、警察、消防、児童相談所、医療機関等との連携も重要です。特に、不審者情報、SNSを介した犯罪、闇バイト、薬物、虐待、自殺予防などは、学校だけで対応することは困難な事案です。

 

学校安全は、一人の教職員の努力だけで実現できるものではありません。組織として取り組むことで初めて実効性が高まります。夏季休業前の今こそ、学校全体でその責務を再確認し、子どもたち一人ひとりの命を守るための取組を進めていくことが求められます。

 

 

 


※この記事は当機構が制作・発行している「学校リスクマネジメント通信」をWEB版として編集したものです。

 編集者 元公立小学校・中学校 校長 鈴木彰典

 

 


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