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鈴木彰典 元 校長 / “まさか”では済まされない学校事故 ~今問われる学校の安全管理体制~

鈴木彰典(学校リスクマネジメント推進機構)です。私は過去に校長経験が13年あり、マスコミが注目していた教育困難校の立て直しを任されてきた経歴もございます。このような学校では報道される内容と実情が全く異なることもあるのですが、様々な経験が今の学校現場の支援に活かされていると感じております。

 

さて、今年に入り、重大な学校事故が相次いで起きています。沖縄県の辺野古沖で発生したボート転覆事故。福島県の磐越自動車道で発生したマイクロバス事故。いずれも、未来ある子どもたちの命が失われる、極めて痛ましい事故となりました。報道を見るたび、多くの先生方が「自校でも起こり得る事故ではないか」という強い危機感を抱いたのではないでしょうか。本号では、今問われている学校の安全管理体制について情報提供いたします。

 

 

◆なぜ、校外活動で重大事故が起きるのか

 

学校の事故の背景に共通して見られるのが、慣れによる危機感の低下です。

 

    • 毎年実施しているから大丈夫
    • 今まで問題がなかった
    • 長年続いている活動だから安心

 

この感覚は、学校現場では非常に生まれやすいものです。特に校外学習や部活動は、教育的意義が大きく、成功体験も多いため、実施することが目的化しやすくなります。しかし、事故はいつも通りの中で起きます。

 

例えば、天候急変、児童生徒の体調悪化、交通状況の変化、引率体制の不備、運転手の疲労、情報共有不足など、小さな問題が重なった時に、重大事故へ発展することがあります。


危機管理で重要なのは、「大丈夫だろう」ではなく、「もし起きたらどうなるか」を考え続けることです。

 

 

◆学校事故は確認不足の連鎖で起きる

 

校外活動では、管理職、担当教員、引率教員、外部指導者、旅行会社、鉄道会社、バス会社、施設管理者など、多くの関係者が関わります。そのため、責任や確認が分散しやすい特徴があります。

 

例えば、天候確認、安全装備確認、運行計画、児童生徒の健康状態、緊急時対応、避難経路について、相手が確認しているだろうという思い込みが生じやすくなります。しかし、重大事故の多くは、この確認の空白で起きています。危機管理において最も危険なのは、「確認したつもり」になることです。

 

重要なのは、「誰が」「何を」「いつまでに」「どのように確認するのか」を明確にすることです。

 

 

◆教育活動が安全より優先されていないか

 

学校には、

 

    • 児童生徒に貴重な経験をさせたい
    • 大会やコンクールに出場させたい
    • 学習機会を確保したい

 

という強い教育的使命があります。しかし、その思いが過度になると、多少無理をしてでも実施するという判断につながる危険があります。

 

例えば、悪天候でも実施、強行スケジュール、深夜・早朝移動、教員不足での引率、十分な下見なしでの活動などは、重大事故につながるリスクを高めます。

 

特に部活動では、勝利至上主義、過密日程、長距離移動、教員の疲労蓄積などが重なり、安全意識が後回しになる場合があります。しかし、学校教育で最優先されるべきものは、「成果」ではなく「命」です。

 

 

 

学校の事故、トラブル

 

 

◆学校が今すぐ見直すべき安全管理

 

(1)「最悪を想定する」視点を持つ

事故防止で重要なのは、「事故が起きない前提」ではなく、「起きる可能性がある前提」で考えることです。

 

例えば校外学習では、「児童生徒が行方不明になったら?」「バス事故が起きたら?」「熱中症が発生したら?」「地震や豪雨が起きたら?」「引率者が負傷したら?」といった最悪の事態を具体的に想定する必要があります。想定が具体的であるほど、備えも現実的になります。



(2)「中止基準」を明確にする

重大事故の背景には、本来ならば中止すべきだったケースが少なくありません。しかし実際には、保護者対応、予算、日程変更困難、大会(コンクール)事情、周囲の期待などから、中止判断が遅れることがあります。だからこそ重要なのが、中止基準の事前明文化です。

 

例えば、「警報(注意報)発令時」「WBGT基準超過時」「引率者不足時」「交通障害発生時」「海上・山間部での危険情報発生時」など、事前に具体的基準を共有しておくことが必要です。その場の雰囲気や感覚だけで判断しないことが重要です。



(3)「人数」ではなく「対応力」で考える

引率人数についても、「規定人数を満たしているか」だけでは不十分です。重要なのは、「事故発生時に対応できる体制か」です。

 

例えば、「児童生徒対応」「救急対応」「保護者連絡」「本部連絡」「他の児童生徒の把握」を同時に行えるかを考える必要があります。特に、「特別に支援を要する児童生徒」「持病のある児童生徒」「大人数移動」がある場合は、通常以上の体制が必要になります。

 

 

◆校外学習や部活動遠征時の事故について

 

コメント放送時の代表

 

今年に入り、修学旅行中に起きたボートの転覆事故や部活動の遠征中に起きたバスの事故により、高校生の尊い命が失われました。どちらも教員がボートやバスに同乗していませんでした。

 

当機構代表の宮下が、TBSテレビ『情報7daysニュースキャスター』に出演し、「教員が同乗することは、事故が起きた後の事故の影響を最小限に抑えるという役割がある。教員は必ずいなければならない」とコメントしました。

 

双方の事故については、明らかになっていないことがありますが、担当者任せになっていないかどうか、管理職が契約書にきちんと目を通しているか、危機管理マニュアルは現実に即した内容になっているかなど、今回の事故を契機にして見直すことが求められています。

 

 

◆おわりに

 

重大事故が起きるたびに、「まさかこんなことになるとは思わなかった」という言葉が聞かれます。しかし、危機管理の本質は、「まさか」を想像することにあります。

 

学校は、多くの子どもの命を預かる場所です。「例年通り」「今まで大丈夫だった」「これくらい問題ないだろう」という感覚を、常に見直さなければなりません。安全管理に必要なのは、特別な技術だけではありません。「小さな違和感を見逃さないこと」「危険を声に出せる職場風土」「中止を判断できる管理体制」「安全最優先を共有する文化」などを積み重ねることが、重大事故防止につながります。

 

 

 


※この記事は当機構が制作・発行している「学校リスクマネジメント通信」をWEB版として編集したものです。

 編集者 元公立小学校・中学校 校長 鈴木彰典

 

 


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