外部環境の見極めと一歩踏み込んだ対応
我々は毎日のように全国の会員様からの相談を受けています。内容は幅広いのですが、まとめると生命・身体・財産・精神等に関する危機の発生頻度を最小化したり、たとえ危機が発生したとしてもその時に生じる影響を最小限に抑えるための助言等が主な内容です。
状況が悪化すると、学校経営や児童・生徒等、また、教職員の命にも直結するケースが多いため、当然ながらこれまでの経験と危機管理の専門知識、また、弁護士や警察OB、心理学の専門家や学校関係者等の意見を織り交ぜてその問題の解決に効果がある専門領域をアレンジしながら解決策を提示しています。今回のニュースレターは、このような日々の中から我々が感じていることや相談事例を中心にお伝えしたいと思います。
◆ 外部環境の変化を見定める
現在、学校を取り囲む外部環境は残念ながら非常に悪いと思っています。そのため、一つひとつの判断の誤りがまさに命取りになってしまいます。これは全く大袈裟なことではなく、最近の報道を分析したり、これまで大切な命が失われる現場の支援を何度もしてきた我々が肌で実感していることです。外部環境が変化するスピードは非常に速く、理解が追い付かないまま現実に対処する必要があるため、意思決定を間違えやすいと思います。変化を見定めて適切に対応するためには、これまでの常識や価値観、暗黙のルール等を一旦疑ってみる事が大切です。それはこれまで当たり前だと思ってきた社会の枠組みや自分が正しいと思っていたこと、そして、学校や教員として当然な振舞いや考え方などです。このレベルで考 察をし直すということだと思います。
コロナ禍で我々は何を失い、何を学んだのでしょうか?そして、今後、どのようなリスクを想定し、何に備えなければならないのでしょうか?私はこの地球規模の環境変化は決して生易しいものではないと思っています。
◆ 危機管理力を強化するタイミング
あなたが能動的に学び、※1情報リテラシー全般を高め、※2リスクセンスを日々強化してきたのであれば、今が学校やあなたの危機管理力を大いに強化しなければならないタイミングにあることは直ぐにご理解いただけると思います。また自分の判断ミスを深く反省しなければならない人もいるかもしれません。しかし、残念ながら、危機管理力を強化する意識が芽生えていない学校は、組織としても個人としても明るい未来から遠ざかってしまうかもしれないのです。これまでが安泰であればある程、また、過去の常識から抜け出せない程、その影響は大きいと思います。今大切なことは、自ら能動的に多数の情報にアクセスし、それらを常識にとらわれずに正しく見定めることです。そうすれば危機管理力を強化することの重要性が分かると思います。大切なものを守るために、常識から抜け出しゼロベースでリスクセンスを磨いて頂ければと思います。
※1 情報リテラシー/(Wikipedia)情報を自己の目的に適合するように使用できる能力のこと
※2 リスクセンス/危険なことを危険なこととして認識できる力
◆ 相談事例について
ここからは、参考として当機構が最近受けた相談事例を共有したいと思います。(一部編集しております。) ①学納金が未納の場合の督促の方法や今後の対応方法について②自殺未遂をして退学を仄めかす生徒と保護者への対応について
③指導が必要な教員に改善を促すものの、それがパワハラだと主張された場合の対応について
④学生がわいせつ行為で逮捕・報道された学校の対応について
⑤オンライン保護者会のリスクとその回避方法について
⑥メンタルが不調になった教員の回復方法について
⑦他の教員に暴力的な振る舞いをする教員に対する対応について
⑧大声で暴言を吐き、約束を守らない保護者に担任が潰されそうな場合の対応について
⑨部活での体罰が発覚した際の初動について
⑩学校でのコロナ対応とワクチン接種のリスクについて
⑪移動教室での遊覧船搭乗に伴う下見時のリスクの洗出しと保護者への説明について
⑫いじめを過剰に訴える児童とそれを鵜呑みにする保護者への対応について
⑬市区町村に対し政治的圧力をかける自己中心的な保護者への対応について
⑭暴力的な保護者に教員が自宅へ呼び出され、それを断る際の対応について
◆ 一歩踏み込んだ対応を
この相談事例から窺える全体的な傾向は公私の学校種を問わず、メンタルが悪化した生徒や教員、保護者に関する相談が増えてきているということです。これは、先述の外部環境の変化にも起因していて、コロナ禍に伴う経済危機や体調の悪化、また、関連する政治や法律、産業構造、事件・事故等に関する報道やSNS等の影響によってトラブルが発生・拡散されているということだと思います。対策のポイントとしては、今までよりも「一歩踏み込んだ対応をする」という事かと思っています。
勿論、個別に対応方法は異なるのですが、これを意識してみるとかなり違うと思います。
この記事は当機構が制作・発行している「学校リスクマネジメント通信」をWEB版として編集したものです。