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学校リスクマネジメント推進機構|学校と教職員向け危機管理相談
学校リスクマネジメント推進機構

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緊急で重大なトラブルが発生した学校の現状

突然ですが、今、貴校で重大なトラブルが発生したらあなたはどうしますか?
生徒のいじめ等による自殺、教員の逮捕、学校の組織的な不祥事の発覚等…。
今回のニュースレターは緊急で重大なトラブルが発生した学校の現状と対応のヒントを可能な範囲でお伝えしたいと思います。
※学校が特定されないように編集しております。

◆ 危機管理マニュアルに頼ってはいけない


緊急性の無い、日常の保護者クレームや生徒指導、労使トラブルから徐々に影響が拡大して重大な危機に至ることはありますが、緊急で重大なトラブルはある日突然やってきます。貴校には危機管理マニュアルが保管されているかもしれません。しかし、このような状況ではマニュアルのある場所やその存在すら忘れてしまい、担当者は目の前の現実的な対応に追われてしまうことが殆どです。たとえ危機管理マニュアルがあったとしても、発生直後の具体的なアクションについて言及されているものはまずありませんし、事案に対応していないケースが多いと思います。初動でのつまづきや意思決定のミスは、致命傷になってしまいます。たとえ、その後の危機管理に全力で臨んでいたとしても、残念ながら極めて大きなマイナスの影響を与え続けてしまうのです。

◆ 初期対応で8割決まる


私の経験上、緊急で重大なトラブル発生時の初期対応で管理職が具体的な現状確認や今後懸念されるリスクを想定し、対策を講じられない場合、8割方は危機管理に失敗すると思います。つまり、事態を最小限に留めることができないということです。
また、どのような優先順位で何をするべきか?という事のイメージができていないと、的確な危機対応はまずできません。有事に急に対応しようとしても無理なのです。失敗を避けるためには、普段から具体的なシミュレーションや第三者の支援体制の整備がとても大切になってくるのです。

◆ 情報収集力が無いと大局観を失う


インターネットやSNSからの情報収集力が無い管理職が初期対応の指揮を執っている学校は致命的な状況に陥りやすいリスクがあると思います。それは学校の置かれている状況を客観的に把握できないからです。自分ではIT分野に詳しくなくても、正しい情報提供を迅速にしてくれる職員が近くにいればよのですが、それでも状況判断のスピードが遅くなってしまうリスクを認識しなければなりません。
人間は自分が知覚する情報から物事を判断するので、その情報が不足していれば当然判断の精度は下がり、間違った結論に至りやすいのですが、厄介なことは当の本人は自分の知っている全ての情報から判断をしているため、それが正しいと思い込んでいるのです。

そこが盲点になってしまいます。例えば、学校で不祥事が起き、SNSでその事実や学校名が拡散されているのを知らないまま、職員に他の対応の指示を出しても、その指示は効果を生みにくいばかりか、状況を悪化させることさえあるのです。要するに知覚できる情報が足りないということは、大局観を失っている状態のため、緊急時に的確な情勢判断ができないのです。そうなると、無用なトラブルを誘発し、時に甚大な2次被害を生じさせてしまう事にも繋がっていくのです。


◆ 学生主任の失態


※以下は実例を組み合わせた研究事例です。

ある学校で非常にまじめで生徒や保護者からの信頼が厚かった教員がわいせつ事案で逮捕されたことがありました。警察での取り調べが終わり当該教員が釈放されたので、学生主任が勤務終了後に自己判断で勝手に自宅へ赴き、激しい怒りから本人を何時間も強く叱責しました。しかし、その教員は夜にそのまま自殺してしまったのです。次の日、逮捕と自殺の2つの事実を知ってしまった生徒1名が、後追い自殺(未遂)をしてしまうという最悪の連鎖が引き起こされてしまいました。当該教員は実名報道だったため、閉ざされた未来を悲観したのかもしれません。

犯罪を起こしたことは批判されるべきですが、怒りに任せた学生主任の勝手な行動が別の危機を誘発してしまったのです。その後、この学校はマスコミ、警察、生徒、保護者、教職員、近隣住民等からの連絡や相談、苦情を一手に受けることになります。生徒は廊下やトイレで泣きじゃくり、授業どころではありません。そのような中、警察から出頭要請があるため、教員は現場を離れなければいけません。そして、マスコミが押し寄せ、学校はパニックに陥ってしまうのです。さらに、現実的な問題として、死亡事案ではご遺族の対応も極めて重要です。

当然ながらご遺族が取り乱している中での対応となるため、丁寧な対応をしなければご遺族のお気持ちを害してしまい、別の大きな問題が発生してしまうケースも少なくないのです。
このような状況の中、学校では他に何を決めなければならないかイメージできますか?それは、明日の授業や来週の行事、部活等をどうするか?です。ここでも危機管理の観点から適切な判断が問われます。

生徒への事実を伝える時の説明では辛い思いが想起される話し方をしてしまうと心にダイレクトにメッセージが突き刺さってしまいます。現在のコロナ禍で弱っているメンタルに必要以上の辛いメッセージを突き刺すと生徒らはどのようになってしまうのでしょうか?

そして、荒れ狂う臨時保護者会や記者会見が待っていることもあります。それを上手くこなさなければ追い打ちをかけるように、更なる批判にさらされてしまうのです。私学の場合は翌年の募集に大きな影響が出ることになるでしょう。今までの募集活動が一瞬で水の泡になることもあるのです。

あなたの学校の危機管理体制は本当に大丈夫でしょうか?この機会に本気で考えてみて下さい。出来ることはあると思います。




この記事は当機構が制作・発行している「学校リスクマネジメント通信」をWEB版として編集したものです。


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