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学校リスクマネジメント推進機構|学校と教職員向け危機管理相談
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残留リスクとは何か

6月21日付けで、東京都知事が辞職しました。
都知事が記者会見で何度も発言する姿が報道されていましたが、あなたの感想はどうでしょうか?
危機管理的にみると、かなり問題のある会見だったと思います。

「法的に問題がなければ乗り切れる」
都知事はこのような仮説を立てたのかもしれません。そして、名前のある弁護士(元検事)に調査を依頼して、共に会見に臨んでいました。
しかしながら、結果はご承知のとおりです。弁護士が声を荒げる場面まで放送されてしまいました。

解決すべきものは、視聴者や都民の感情であり、法律に違反していないことを証明することではないのです。


つまり、仮説を間違えたということだと思います。

あの場面で、視聴者や都民の感情を解決するために必要な手段を選択していればダメージは最小限で済んでいたのかもしれません。
「法的に問題がなければ乗り切れる」
という仮説ではなく、
「視聴者や都民の感情を解決すれば乗り切れる」という仮説を立て、それを実現する手段として、自身の話し方や振る舞い、また、言葉の選択などのコミュニケーションを選択し、世論の温度が下がるタイミングで法的な見解を第三者が述べる、という順番であったなら局面が変わっていたかもしれません。

仮に学校で問題が発生したときに、あのような会見をしてしまったら・・・。と考えるとゾッとしてしまいます。

さて、少し視点を変え、本日は「残留リスク」について説明したいと思います。

残留リスクとは、文字どおり「残っているリスク」のことを言います。

認知されていないリスクや、認知はしているものの対策を講じていないリスク(保有リスク)、また、リスク対応後に残るリスクという言い方もされています。

実務上、特に注意が必要なことは、ある問題を解決するために学校として手段を講じたものの、この問題に含まれる他のリスクを認知して対策を講じることができなかったことから、このリスクが大問題になってしまうようなことです。

たとえば、いじめ問題があり臨時保護者会を開催する学校では「保護者会が紛糾する」というリスクを避けたいはずです。その対策として、想定問答集を作ったりするわけです。
そして、この想定問答集が機能すれば、保護者会の紛糾リスクが低減するため、特に問題なく保護者会が終わることもあると思います。

しかし、このような学校でも保護者会後に大問題に遭遇する場合があります。

臨時保護者会の2日後、あるマスコミから学校に連絡があり、保護者会で学校が配布した書類を入手したので、その書類が本物かどうか確認してほしい、との依頼があったのです。配布した資料には想定問答で回答した内容が一部に明記されています。

この学校は配布した資料が「マスコミに漏れた場合に問題になるリスク」という残されたリスクを認知できなかったのです。

これが残留リスクです。

学校がこのリスクを認知できなかったことから、学校が配布した資料の内容がマスコミに漏れて、結果的に「やはり責任逃れの保護者会。独自資料入手」という内容が週刊誌に掲載され、再び焦点があたってしまったのです。
繰り返しますが、保護者会は紛糾しなかったにもかかわらず、です。

もし、事前にこのリスクを学校が捉えていれば、資料を配るか否かの判断や、配る場合でも、その内容について、批判を避けるための内容に調整できたはずです。

臨時保護者会には把握しにくいリスクが他にもたくさんあります。
経験上、一番多いことが、本題に関係のない学校への不満です。たとえば教員の不祥事が問題となり、臨時保護者会が開催された場合でも、うちの子は2カ月前に友人から怪我をさせられた、1週間前に担任に厳しく注意されて子どもが落ち込んでいる・・・等。
こういった保護者会の本題に関係のない事も残留リスクとして認識しておくと、臨時保護者会の想定問答集に事前に盛り込むことができるのです。

学校には様々なリスクがありますが、対策を講じるときには、「残留リスクはないか?」ということを、是非考えてみてください。
ポイントは頭の中でリハーサルをして、その都度、リスクを明確にしながら対策を考えていくことです。

冒頭で触れた都知事の会見では法的な対策が打ち手として講じられましたが、見えていなかった残留リスクは何だったのでしょうか?このこともあわせてもう一度考えてみてください。



この記事は当機構が制作・発行している「学校リスクマネジメント通信」をWEB版として編集したものです。


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