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学校リスクマネジメント推進機構|学校と教職員向け危機管理相談
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学校で起こる様々な問題に どう対処するか(前編)

4月になり、新年度がスタートしました。当機構も新メンバー、石田隆輔を迎え、新たな気持ちでスタートいたしました。石田は、警視庁で長年勤務した実績があり、学校事案を数多く担当してきました。今回は、石田が見聞きした学校事案について聞きました。

家族への対応について


――学校事案で印象に残ったことは?

暴走族の抗争事件が十数年前に頻発したことがあります。一人ずつグループを抜けさせ、最終的には立ち直らせる。その段階まで学校とともに支えて社会復帰させたことが印象に残っています。特に大変だったのはご家族への対応です。24時間、保護者の電話がかかってきます。夜中も関係ありません。ですが、そのお母さん方が、立ち直った息子さんとともに後でお礼に来てくれたこともありました。

――どのような保護者が多かったのでしょうか?

保護者の方は、1人よりも、3名から4名で来られることが多かったです。それで意見が一致している場合はよいのですが、一人ひとり違う意見で、とりあえず皆で行けば怖くないという感じで来られます。自分のお子さんを絶対に信じていて100%非を認めない。
一般論から話を進めて、そこから親御さんに納得してもらったこともありました。未成年者の場合、特に親御さんの同意が必要な場合があり、そのために呼び出したりするのですが、子どもが逆にご両親を納得させて一緒に連れて来る場合もかなりありました。
それとともに、学校には必ず連絡を取っていないと、迷惑がかかります。授業中は極力避けなければならないですし、その辺も学校と連絡を取り合いました。

――保護者に納得してもらうために1番気にかけていたポイントはなんですか?

真実をありのまま、客観的に「こういう状況でした」と伝えることです。「こういう風に発展しうる」という予測を話すこともありますが、あくまでも事実をありのままに伝えます。その上でお母さんたちにも正直に気持ちを言っていただく。それが出発点となります。

――子どもを立ち直らせるために重要なポイントはどのようなことでしょうか?

一つは家族が見守ること。次に学校。そして警察。そこで必ず支援ができる体制を作っておくことです。検挙しておしまいだったら、必ずもっと悪さをする子どもが出てきます。それが連鎖反応を起こすので、一人ずつ一人ずつ丁寧にですね。子どもは、自分が納得しない限りは立ち直りません。

未然に防ぐために気を付けること


――学校に関わる事件、事故をどう防いでいくか。どういう手立てを未然に講じておく必要がありますか?

先生方の共通認識、情報共有が大事です。問題が起きる前には、必ず「兆し」があります。たとえば学校に保護者から電話が入ったとします。けれど他の先生方に「電話があった」との情報が共有されていなければ、「なんだ、あれだけのことがあったのに、誰も知らないのか」ということになる。そのことが、どんどん、保護者のネットワークで広がってしまうことがあります。たった1本の電話対応が大事なのです。
ですから、こういうことがあったら、こういうことに気を付けようとか、電話の対応はこうしようとか共通の認識が必要になります。

――「兆し」があった段階でどのような対応をすればいいでしょうか?

学校が子どもさんのことを家庭に伝える場合、両親だけでは不十分な場合もあります。話を家庭に持ち帰ったら、おじいちゃん、おばあちゃんなど協力を得られる人に話をしておいてもらいたいのです。皆が共通認識を持っていれば、お父さん、お母さんだけで悩まずにすんだり、いろいろな対応ができるはずです。
ただ、これが逆効果のこともあります。皆に情報を共有することで、時間が経つとともに様々な知恵が入って、証拠を隠してしまったり、事件を起こしていても「俺はやっていない」と言ったり、ということがありますね。これを防ぐためには、特に子どもに関しては、速やかな対応が何より大事です。

特徴のある子どもへの対応も考慮する


――この子にはこういう指導が良いといった、子どもの性格ごとの対応方法があれば教えてください。

目つき、動作、会話の内容など、全体を見ていただきたいですね。すると、発達障害であったりするのです。ただ、把握はしにくく、本来は特別支援学級に行くようなお子さんでも、親御さんが「うちの子は大丈夫です」という場合がかなりあります。けれど、その子が集団の中でちょっと違う行動をしていじめにあったり、乱れたりするんですね。
たとえば、先生が「気のすむまで廊下を掃除していなさい」と言った場合でも、チャイムが鳴ればほとんどのお子さんは教室内に入ります。しかし、このようなお子さんはチャイムが鳴ってもまだ一生懸命掃除をしている。だから先生は「何をやっているんだ」と怒ってしまって子どもの方は「えっ」となる。この場合先生が「チャイムが鳴ったら教室に入りなさいよ」と一言伝えておけば何ら問題はなかったはずです。この件は、子どもが悪いのではなく、先生の知識がなかったということなんですね。
しかし、担任一人ですべてを把握はできません。他の先生方が子どもを違う角度から見ることが効果的です。「この子はちょっと違うのではないか」というような着眼点を持つことが大事ですね。

――発達障害の疑いがある場合の対処法は?

事件、事故が起きた場合や、近所で大暴れしたり、大騒ぎしたりした場合も、お子さんの過去の通院歴、病歴を伺うなど、できるだけ多くその子に関する情報を共有して、申し送り事項とするなどの少しの手間が重要です。特に経験の少ない若い先生は、客観的に問題を見ることが大事なのではないでしょうか。
(以下、次号に続く)



この記事は当機構が制作・発行している「学校リスクマネジメント通信」をWEB版として編集したものです。


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