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学校リスクマネジメント推進機構|学校と教職員向け危機管理相談
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保護者からのクレーム発生時の注意点

前回は、クレーム発生時の初期対応の三原則(=①謝罪をする、②話を聞く、③言い訳をしない)についてお話ししました。起きてしまったトラブルをなかったことにすることはできませんが、その影響をできるだけ小さくすることは可能です。そのために、初期対応が大変重要だということはおわかりいただけたでしょうか。

クレームを言いに来る人の要求は、①謝れ、②話を聴け、③説明しろの3つです。初期対応とは、この相手の3つの要求に順番に答えていくことだということもお話ししました。「順番に答える」ということが大事で、①の謝罪をとばして、先に③説明や言い訳をしてしまうと、相手の怒りをよけいに煽ってしまうということも、再度強調しておきたいと思います。
「謝罪」については、「すべて私が悪かった」ではなく「ご不快な思いをさせてすみませんでした」「わざわざ出向いていただいて申し訳ありませんでした」など、責任論ではない「限定的な謝罪」をするということも心に留めておいていただきたいと思います。

話し合いで、真の問題点を見出す


初期対応を終え相手の怒りがおさまってから、ようやく「説明」や「交渉」の段階に入ることができますが、この段階で大切なことは既に相手との間に「ラポール」という関係性が構築されていることです。「ラポール」とは親和状態のことであり、こちら側の説明が「言い訳ではなく事実の説明」として受け止めて頂ける状態のことです。そして、「交渉に応じて頂ける」状態のことを言います。これは信用や信頼という深い関係性ではなく、その一歩手前の「この先生は話を聞いてくれる人だなぁー」「結構信頼できそうな先生だなぁー」「この先生は子どものことをちゃんと考えてくれているなぁー」ということを相手がイメージできる状態のことです。
このラポールが構築されていない相手に、いくら非の打ちどころがないロジカルな説明をしてみても、残念ながら相手には言い訳として伝わってしまうので、時間をかけて説明の質を高めるよりも、ラポールという関係性を構築するための手段を講じることが何よりも大切になるのです。
ラポールが構築されていれば、相手も本音で話をしてくれるので話し合いが進みー、真の問題点も見出しやすいのです。この関係性は普段から構築することもできますし、クレームを受けてから構築することもできます。
方法については、我々の研修会でも指導しておりますので機会があれば是非参加してみて欲しいのですが、相手の動き、言葉、タイミングなどの生理機能を一致させ、ミラーニューロンという神経細胞を活性化させるという科学的なテクニックがあります。
これを言い換えると「相手の立場に立つ方法」ということです。

日頃の信頼関係づくりが
トラブルを未然に防ぐ


クレームは、もとをたどるとちょっとした行き違いが火種となっていることはよくあることです。このような「小さな行き違い」を防ぐためには、ふだんから保護者との信頼関係を作っておくことが大事です。それが難しくても「ラポール」という関係性は事前に構築しておきたいところです。
たとえば、校内で保護者とすれ違うときには、「こんにちは」と挨拶をする、日頃から学校の活動を「おたより」などで知らせておくなどは、すでに多くの学校がしていることでしょう。それに加え、保護者会などで、保護者たちが発言しやすい仕組みを作ることも考えてほしいと思います。
プリントを配って、「何かご質問ありますか?」では、だれも発言しないか、声の大きな保護者が2、3人手を挙げるのが関の山です。全員が発言できるしくみを考えましょう。

たとえば、「ペンを受け取った人は発言してください」と言って、一人の保護者にペンを渡し、発言したら次の人にペンを渡す。渡された人は必ず何か言わなければなりません。リレーのバトンのようにペンが全員に回るようにし、全員の意見を聞きます。ちょっとした演出ですが、これだけのことで、意見が言いやすくなります。
日頃から、このような意見交換を行うことで、保護者の価値観や問題意識が把握しやすくなり、不満が出てきたら、小さいうちに対処できるのです。
今は、保護者との接点が足りない学校も増えていますから、コミュニケーションの質と量を意識的に増やしていく必要があります。学校で保護者に会ったら、会釈だけでなく天気のことでも何でもいいので話しかけましょう。話しかけなければ、と思えば、そのための話題を常に探すようになります。一番いいのは、子どもの様子をよく観察することでしょう。
保護者に会ったら「この間、00くんはこんなことをがんばっていましたよ」とひと言添える。我が子のことを見ていてくれて、喜ばない親はいません。このような積み重ねが、信頼関係を築きます。何かトラブルがあったときも、即クレームに結びつくことは減るでしょう。

理不尽な要求にはどう対処するか


日頃から信頼関係を築いていても、「自分の子を選手にしてくれ」「担任の先生が気に入らないから変えてくれ」「00君が嫌いなので、クラスをいっしょにしないでくれ」等々、理不尽な要求をしてくる保護者というものは、どこの学校にも少なからずいるものです。
このような場合の対処法については、次回、お話ししましょう。



この記事は当機構が制作・発行している「学校リスクマネジメント通信」をWEB版として編集したものです。


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