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学校リスクマネジメント推進機構|学校と教職員向け危機管理相談
学校リスクマネジメント推進機構

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不祥事が発生した学校では何が行われたのか?

今回は、当機構の会員校から相談を受けて、対応した事例について紹介しましょう(プライバシー保護の観点から、詳細は実際とは変えています)。
実際の事例を見ることで、学校のリスクマネジメントがなぜ大事かご理解いただければと思います。

突然警察からの連絡。そのときどうする?


ある学校から、「教員が児童買春で逮捕された。
この事態の影響を最小限にするために支援をしてほしい」という内容の電話を受けました。時刻は11時35分頃。第一報は、11時30分、警察からの電話を教頭先生が受けました。校長先生は不在でしたがすぐに携帯電話で連絡。その後、校長先生から当機構に電話をくださったのです。

リスクマネジメントにおいてもっとも重要なのが「迅速な対応」です。この学校では、あらかじめ当機構の開催する研修を受けていただいていました。そして、万一危機が起こったときの役割分担と、指揮連絡体制を作っていました。教頭先生は、研修で学んだとおり、警察からの電話を受けたときに、必要事項をもれなくメモし、すぐに危機管理の責任者である校長に連絡しました。

警察、メディア、保護者、生徒への対応


連絡を受け、当機構のスタッフは学校に急行し(その後、近くのホテルに泊まり込みながら)、警察対応、メディア対応、保護者対応について、リハーサルも含め具体的な支援を行いました。
警察対応では、容疑は1つか?余罪はあるか?いつ逮捕されたのか?関係者は本人に面会できるか?などを確認することで、その教員の勾留が継続する可能性があるのかどうか、もしくは釈放の日時等を類推することができます。これらの情報は、本人の処分、授業や行事の変更、臨時保護者会の日程や本人への接触等に欠かせない情報となるため、必ず確認するように伝えました。

メディア対応では、ポジションペーパー(前号参照)の作成や念のための記者会見の準備、どのような服装や態度、表情で臨むかなど、一つひとつ確認していきました。また、通信社や新聞社、TV局などからの、逮捕された教員は在籍しているのか?いつから勤務しているのか?学校での評価はどうなのか?今まで端緒はあったのか?学校としてどのように対処するのか?等の電話取材には、事実のみを述べ憶測や希望的観測を述べないことをアドバイスしながら、電話の横で我々が話の流れを推察し、時にメモを渡しながら対応をしてもらいました。

保護者対応では、保護者会開催のお知らせ文の作成、想定問答集の作成などを支援しました。また、教員の逮捕というショッキングな事実を保護者や生徒に伝えるにあたって、心理的に影響の少ない言葉を用いた説明の仕方も具体的にアドバイスしました。
生徒のフォローでは、まず、伝える目的をはじめに意識するようにしてもらいました。本ケースでは「生徒に動揺を起こさせないこと」が目的であったため、説明の最初に「みなさんに至急お知らせしなければいけないことがあります」ではなく、「みなさん、大丈夫なので、これからする話を落ち着いて聞いてください」としました。

このようなことは、非常に簡単に思えるのですが、いざというときに意識することは難しいものです。対応に失敗すると生徒に動揺が拡がり、必要以上の精神的なダメージを与えてしまうことになります。この事案では記者の質問内容から、他にニュースになるネタを持っている可能性が認められたため、学校周辺で、生徒を待ち伏せての取材も予想されました。そこで、担当教員を通学時間に合わせて最寄り駅と通学路に配置し、生徒保護のための巡回を実施しました。一方、過剰な巡回は逆にマスコミから批判される危険性があるため、このリスクを低減するための対策も同時に実施しました。

ネットの風評被害についても対策を行いました。具体的には、LINEなどで情報が拡散された場合のリスクなどを説明し、また、風評被害に伴う巡回サービスを本日から重点的に強化することやキーワードを変更するなどのアドバイスを行ないました。そして、特に生徒へ事実を伝達する際には、学校の隠蔽と取られるような言い方はしないように要請しました。ここで一部の生徒でも学校の説明に不信感を抱いた場合、すぐに情報が脚色されて広まってしまうからです。一方、生徒から校内の情報が拡散されることはある程度覚悟しなければいけないので、その影響をいかに少なくできるかがポイントになるということも併せてアドバイスしました。

先手先手の対応が、危機を最小限に


警察の捜査によって、この教員は過去にも児童買春を繰り返していたことが判明しました。非常に悪質であり、社会的にも大きな波紋を投げかけるょうな内容でした。やはり、当初からマスコミも余罪を嗅ぎ付けていたようです。
もしも学校の対応が不適切であった場合、この余罪についての電話攻勢や、記者たちの頻繁な来校によって、学校内はパニックに陥っていたかもしれません。そして、学校側が発表する前に、マスコミから生徒や保護者に情報が伝わり、憶測が憶測を呼んでさらに騒ぎが大きくなったかもしれません。そしてインターネットで爆発的に情報が広がり、学校のブランドに大きな傷がついたであろうことは想像に難くありません。

この学校の場合は、すぐに当機構に連絡をくださり、こちらの指示に従って、するべきことを一つひとつ冷静にこなしていったことで、事件の影響を最低限に食い止めることができました。また、先手を打って対応したことで、電話対応に追われたり、謝罪に奔走したりといった混乱もさほどなく、結果的に作業も最小限ですみました。さらに、学校側が、真摯な態度で保護者にきちんと対応したことによって、保護者の中に多数の支援者も現れました。
「本当にこの度はありがとうございました」帰り際に校長先生から声を掛けられたときに、我々は初めて息を抜くことができたのです。



この記事は当機構が制作・発行している「学校リスクマネジメント通信」をWEB版として編集したものです。


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