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学校リスクマネジメント推進機構|学校と教職員向け危機管理相談
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グローバル化と学校リスクマネジメント

現在、日本を含め世界各国がグローバル化しています。
このグローバル化の理念は地球全体を一つの共同体と見なして、世界の一体化(グローバリゼーション)を進める思想であるとされています。

これは見方を変えると世界の一体化を進めるグローバルな組織がその方針を示す中で、各国がその方針に沿った対応を推進していくことで実現するものと考えられます。

この変化はある意味では分かりやすく、また、ある意味では分かり難いことなのですが、私はこの変化は非常に冷徹で無機質であり、かつ、綿密にそして最優先事項として様々な手段で実行されていると思っています。


今回のニュースレターはこれらの動きを捉えるために必要な考え方の概要をお伝えしたいと思います。

 

◆ 全体最適と部分最適

 「全体最適」と「部分最適」という言葉がありますが、グローバル化の理念の中では、世界的な優先事項を推進することが「全体最適」であり、一国の優先事項は「部分最適」になります。
 身近な例で考えると、一人の児童生徒、学生等も当然大切なのですが、一人よりもクラス全員のことを考えなければなりません。


そして、クラス全員も当然大切ですが、それよりも学年全体や最後は学校全体のことを考える、これが「全体最適」という考え方です。
学校では、主に学校長が「全体最適」の判断を担いますが、時に担任は「全体最適」を理解しつつも「部分最適」を望む立場です。


 同様に、国と都道府県、市区町村の繋がりの中でも「全体最適」と「部分最適」の構造が存在しています。
これは良いか悪いかの話ではなく、私がグローバル化について感じている動きと考え方です。


 我々一人ひとりが日常生活に望むことは「部分最適」になることが多いため、グローバル化の中での優先順位が下がってきているのではないでしょうか?
おそらく、この様な変化を経ないと地球規模での持続可能性を高めることが出来ないのかもしれません。

 

 

◆ 常識とは変化するもの

約3年前、中国の武漢で新型コロナウイルス感染症が確認されたとの報道がありました。
当機構では当初から中国の各地域の感染状況や日本人学校の現状などの情報をメルマガで配信しておりました。


日本の学校ではまだ危機意識が非常に低く、重大なリスクとして認識されていない状態でしたが、我々はこの段階で早期の感染症対策の準備、また、休校時でも授業が行えるオンライン体制の整備を強く推奨させて頂きました。
当時は在校生が学校に一定期間行けないという事とオンラインで授業を受けるという事は一般的ではなく、ありえないとの声もありました。
つまり過去の常識にはなかった考えでした。


しかし、3ヵ月後、日本国内での感染確認が報道され、学校が休校になる状況が現実となりました。
この段階で常識が一気に変わったのです。


我々のメルマガでのリスク情報を自分事として捉え、事前準備を進めてきた学校はスムーズにオンライン授業に移行でき、感染症対策の備品も早期に購入できたため不足することはありませんでした。
その後、我々に対し、助言への御礼や「驚愕した」「リスクマネジメントとはこういう事だ」との話を複数頂いたことを思い出します。


※この話は感染症に対する助言ではなく「学校で授業が出来なくなってしまうリスク」に対する対策の助言です。


このようにこれまでの常識では「ありえない」と考えていたことが、数ヵ月後には新たな常識に変化してしまうことが実際にあるのです。

 


一方、このリスクに限らず、リスクの大きさは日々のデータの蓄積や報道のされ方、時間の経過、対策の拡がり等によっても捉え方が変わってきますので、今のリスクの大きさが過去と全く異なるケースもあります。
その点は十分な注意が必要です。

 

◆ 重要な現状把握

このように大きな環境変化の中、学校には新たなリスクが生じることがありますが、一番のリスクは現状把握をしなかったり、間違った現状を把握してしまうことです。
そうすると、当然ながらリスクの想定と対策まで誤ってしまい、さらに痛い目に合うまでその誤りに気付けないことが多いのです。


「意思決定」とはあらゆる情報から最適解を判断することです。


この「意思決定」に必要な思考方法として、演繹的な考え方から帰納的な考え方への比重を大きくすることが大切だと私は考えます。
もはや一般論や常識(大前提)が通用しない状況が増えてきた中、それを基に演繹的な判断をすれば結論を間違えてしまう可能性があるからです。


今は学校を取り巻くあらゆる客観的な事実や事例から共通点などを抽出した上で、一般論や常識に影響を受けずに「現状把握」をしっかりと行なって結論を出す帰納的な判断が求められます。
これまでの一般論や常識(大前提)は何であったか、そして、これらは何から影響を受けてどのように今後変化していくのか?そこを真剣に考えることが、真の学校リスクマネジメントにつながります。

 

 


しっかりとした現状把握ができればリスクの想定や結論となる対策を間違えることは少なくなるはずです。


グローバル化が進む中、世界的な「全体最適」を意識しつつも「部分最適」のバランスを見極め、かつ、常識の変化を認識して現状把握や対策につなげていく。
このようなことが、これからの学校リスクマネジメントに求められているのではないでしょうか?

 


※この記事は当機構が制作・発行している「学校リスクマネジメント通信」をWEB版として編集し、加筆したものです。


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