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インターネットに学校の誹謗中傷をされた場合の対処法
今回は、インターネ ットの掲示板に、学校の誹謗中傷が書き込まれた場合の対処法を、当機構の顧問弁護士の梶智史氏にうかがいました。
その書き込みによって
どのような利益が侵害されるのか
インターネットの掲示板に、学校に対する批判的な書き込みをされた場合、だれでもすぐに消したいと思うのではないでしょうか。1個1個消していたのではラチがあかない、あまりにも悪質な書き込みで、学校の評判を落とす、入学者の減少などの被害にもつながるような場合、損害賠償を求めるなどの対策を講じる必要があります。
法律的に対処するとしたら、その書き込みが、学校、教師又は児童・生徒等のどのような利益が侵害されるのかを考える必要があります。この場合、次の二つが考えられます。
１）名誉権
社会的評価を低下させる内容の書き込みがされた場合、名誉権の侵害がなされたといえます。
どのような場合に「社会的評価を低下させ」たといえるかについては、新聞記事の名誉毀損表現が問題となった事案（最判昭和31･7･20民集10･8･1059）において、「いやしくも一般読者の普通の注意と読み方を基準として解釈した意味内容に従う場合、その記事が事実に反し名誉を毀損するものと認められる以上、これをもって名誉毀損の記事と目すべきことは当然である。」と判断されています。
なお、社会的評価を低下させる表現行為をされた場合であっても、①事実の公共性、②目的の公益性、③摘示された事実が重要な部分について真実であることまたは真実であると信ずるにつき相当の理由があることを満たす場合には、違法性がないとされます。
２）プライバシー権
プライバシー権とは、私生活をみだりに公開されないという法的保障ないし法的利益のことをいうものとされます。プライバシー権の侵害に該当するか否かは書き込まれた情報が、①私生活上の事実または私生活上の事実らしく受け取られるおそれがある、②一般的に考えて、公開して欲しないだろうと思われる、③一般の人々に未だ知られていない、④公開によってその人が不快・不安に感じたかどうか、によって判断されます。
プライバシーと個人情報の違い
ところで、個人情報とプライバシーとはどう違うのですか、とよく聞かれるのですが、プライバシーは、私生活上の知られたくない情報のこと。個人情報は、個人情報保護法上、決められている個人識別情報のことで、たとえば名前と住所と生年月日のように、これとこれの情報がそろったら、どの人かわかる、という情報のことです。個人情報よりもプライバシーのほうが上位の概念になります。
具体的な対処法
さて、具体的な方策としては、どうした らいいのかを段階ごとに見ていきますが、その前に、インターネットの掲示板に書き込みがされ、公開されるには、①インターネットサービスプロバイダ、②コンテンツプロバイダ、③行為(書き込み）者の３者が関係するということを知っておいてください。
第1段階 記載された情報の削除を目指す
（１）サイトの管理人（コンテンツプロバイダ ）に対して削除依頼をする。
（２）コンテンツプロバイダに送信防止措置依頼をする。（プロバイダ責任法３条２項）
（３）裁判手続き（仮処分）によって削除の仮処分を求める。
第2段階 記載した相手(行為者）を特定する
行為者を特定するには、コンテンツプロバイダに対してIPアドレス等の情報を開示するように請求し、その後、インターネットサービスプロバイダに対して契約者の情報を開示請求します。
第3段階 民事訴訟や刑事告訴を検討
書き込みが名誉権やプライバシー権の侵害に当たると判断され、行為者が特定された場合は、損害賠償請求、または告訴することができます。刑事罰になった場合は、3年以下の禁固刑、または50万円以下の罰金が課せられます。
告訴しないまでも、特定した相手に「そういうことをしたら、刑事罰になりますよ」と言って止めさせるという手もあります。また、「ネットに書くよ」と脅された場合も同様です。
LINEの場合は？
では、LINEで誹謗中傷をされた、いじめにあった
などの場合はどうしたらいいのでしょうか。
原則として、ＬＩＮＥはユーザー同士が通信を行うことを目的とするものなので、通信の秘密（憲法21条２項）の要請もあり、削除依頼やアカウント削除を求めることはできません。現実的にも、特定のユーザー間で第三者を誹謗中傷するやりとりがされていたとしても、外部の者がこれを知ることは困難です。ただし、たとえばクラスの中の特定の児童・生徒のみを排除して作成されたグループで、その児童・生徒を誹謗中傷する書き込みをすることは、民事上の名誉毀損に該当する可能性があります。
この記事は当機構が制作・発行している「学校リスクマネジメント通信」をWEB版として編集したものです。