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学校リスクマネジメント推進機構|学校と教職員向け危機管理相談
学校リスクマネジメント推進機構

ニュースレターWEB


【教員向け】通称パワハラ防止法施行に伴う留意点について

今回は2022年4月から全面施行された通称パワハラ防止法(労働施策総合推進法の改正)に伴う今後のリスクについてお届けいたします。  
大切なことは学校全体でパワハラ防止対策の方針を示し、それを周知・啓発することにより教職員に学校としての考え方を示しておくことです。また、相談に応じる体制の整備や発生時の迅速な対応等も求められますので、細部の確認も必要になってきます。  
学校がこれまでと同様、教職員のパワハラ被害者を作らないように努めることは当然のことなのですが、一方では加害者を作らないという考え方や組織のリスクマネジメントとしてハラスメント全体の問題を考えていくことも必要となってきます。  
 
 
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厳しい外部環境

たとえば学級経営に問題のある教員を指導したベテラン教員や管理職の振舞いが、当該教員からパワハラであると指摘されてしまった場合、適切な対応をしないと、それがパワハラに該当するか否かを問わず、問題化するリスクが高まると考えられます。  
そうすると当然、加害者とされてしまった側のモチベーションも下がり、指導も及び腰となってしまうため、当該教員の問題が是正されない…といった悪循環に繋がってくるのです。そればかりではなく、この問題はタイミング的に報道ニーズが高いため、悪評が外部に拡がりやすい環境にもあるのです。  
 
 

勘違いと悪用

仮に学級経営に問題のある教員を指導する側の言動に問題があった場合には、今後改善していくことが求められるのですが、指導する際の言動に問題が無かった場合でも、指導された方が「これはパワハラでは?」と勘違いして訴えてくるリスクや「パワハラだと主張すれば何も言い返せないはず・・・」と意図的に悪用されるリスクにも組織として事前に対策を講じる必要があります。  
 
つまり、教職員全体で次の2つを共有しておくことが求められてくるのです。  
 
  • ●業務上必要な範囲内で適切に行われる注意はパワハラではない
  • ●自分が不快だと思うことを過剰に「ハラスメントだ」と主張することは「ハラハラ=ハラスメント・ハラスメント」という嫌がらせ行為である
 
これは学校にとって非常に重要なリスクマネジメントですので、勘違いと悪用のリスクを防ぐために教職員間で共有してください。  
 
 

相談窓口を設置する際のリスクと選択肢

ある学校の話では相談窓口としてハラスメント委員会を作りましたが、委員のほとんどの教員が陰湿なハラスメントを実際におこなっている加害者側のグループで構成されており、相談自体が隠蔽され続けるシステムが組織内にできあがっていました。  
結局、ハラスメントの被害を訴えていた教員は「いくら訴えても正式な受理さえしてもらえない。学校には自浄作用を期待できない」との結論に至ってしまい、精神を病みながら退職。  
その後、自らの悔しさと正義感から週刊誌や労働局などに事実を通告し、問題が露呈したケースがあります。折角勇気を出してハラスメント委員会に相談したにもかかわらず、このような扱いを受けてしまった虚しさや絶望感は計り知れません。  
 
学校がハラスメントの窓口を設置する意義としては相談や情報提供によってリスクの早期発見が可能になるため、結果的にハラスメントの影響を最小限に抑えられることです。  
一方、上記のケースのように窓口が機能せず、ハラスメント問題を隠蔽していた事実が拡散してしまえば、当然大きな批判にさらされる可能性もありますし、マスコミ目線で考えると報道価値は高いものと思われます。  
つまり、ハラスメントの影響を最小限に抑えようとして設置した窓口の意味が無くなってしまうということです。相談窓口は学校の内部だけではなく、外部の弁護士事務所等への設置も選択肢として考えられます。  
また、幅広い相談を受け付けるためには、匿名での相談や情報提供も併せて可能にすることも検討できます。その際、実名相談とは対応条件が異なることや虚偽の相談や情報提供には調査をして罰則を設けるなど、悪質なものを防止する対策も併せてルールに盛り込むことも考えられます。  
これは学校の実情に応じて検討する必要があり、セクハラのように別のハラスメントの相談窓口と一本化することが効率的な学校もあります。  
 
 

学校リスクマネジメントとして

労働問題を抱えている教職員やユニオン、労働組合、労働局、労基署等から「学校はこの法律で定める事業者の措置義務を果たしているのですか?」と質問された場合に、学校としてどのように答えることができるのかということがリスクマネジメント上の分岐点になるかもしれません。  
学校が措置義務を果たしていなければ違法性を指摘されてしまう可能性があるからです。そして、これはリーガルリスクだけに留まらず、WEBも含む学校の悪評や報道リスク、教職員のモチベーション低下、入学希望者の減少リスクにもつながる問題です。  
ハラスメントの被害者や加害者を作らない、そして、学校リスクマネジメントの観点から、早期の体制構築が望まれます。  
※あなたが国公立学校の教職員でパワハラを受けている、若しくはパワハラだと訴えられている場合はこちらで解決できるかもしれません。
https://www.relief-point.co.jp/benkei_lp/index.html  
 
 

まずはパワハラについて知ることから始めよう

ここまで教員の方向けに通称パワハラ防止法について解説してきました。ですが一口にパワハラといってもその実状は多岐に渡り、どのような行為が該当するのかという判断がむずかしいケースも少なくありません。ここではパワハラに関する基礎知識をご紹介します。  
 

パワハラとは

職場において行われる  
  • ① 優越的な関係を背景とした言動であって、
  • 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
  • 労働者就業環境が害されるもの
 
であり、①から③までの3つの要素を全て満たすものとされています。 なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については該当しません。  
学校では教員が生徒の前で、他の教員から罵声を浴びるといった、一般企業とは少し異なる子どもに影響を与えるパワハラも想定されます。  
また、パワハラは上司から部下のように、立場が上の人が下の人に対しておこなうものだとイメージされますが、パワハラの方向は立場が上の人から立場が下の人だけではありません。  
これは逆パワハラといい、立場が下の人が上の人に向かって不快な言動を浴びせることもあります。例を挙げると、嫌いな管理職に対して優越的な関係を背景とする教員集団が暴言を吐いたり、少し注意されただけで「パワハラだ」と言い張ったりすることです。  
このように、パワハラにもさまざまなケースが存在します。そのため、職場では、何がパワハラに該当するかを理解して、良好な関係を保たなければいけません。  
そこで知っておきたいことの一つが、パワハラの6類型です。  
 
 

教員に対するパワハラの6類型

 
6類型 概要
教員に対する身体的な攻撃殴打、足蹴り、相手に物を投げる等
教員に対する精神的な攻撃人格を否定するような言動
教員に対する人間関係からの切り離し集団で無視し、孤立させる等
教員に対する過大な要求必要な教育を行わず、高い業務目標を課し、
未達成の際は厳しく叱責
教員に対する過少な要求嫌がらせで仕事を与えない
教員に対する個の侵害性的指向・性自認、病歴、不妊治療等の
機微な個人情報の暴露
 
 

教員に対する身体的な攻撃

(殴打、足蹴り、相手に物を投げる等) 相手の体に危害が加わるような行為はパワハラの6類型に該当します。例を挙げると以下の通りです。  
例えば、A先生が行う授業に対してB先生がアドバイスをする際、飲み込みの悪いA先生に向かってB先生が文房具を投げたとします。  
この行為は、Aの体に危害が加わる恐れがあるので、パワハラの6類型に該当する条件としては十分です。さらに、B先生の方が上の立場にあるのであれば、さらに悪質だといえます。物を相手に投げる行為は暴行罪に該当するおそれもあります。(相手に当たらなくても)  
 

教員に対する精神的な攻撃

(人格を否定するような言動) 相手の体に危害が加わらなくとも、精神的に過度な不快感を覚えたらパワハラの6類型に該当します。精神的な不快感を与える言動は以下が参考になります。  
 
  • ●人間性を否定する暴言
  • ●大勢の前での説教
  • ●長すぎる叱咤
  • ●馬鹿にするような言動
 
例えば、C先生が必要書類の作成を忘れてしまったというミスを犯したとします。そのミスに腹を立てたD先生は、わざわざ職員室の外にC先生を連れ出し、周りに生徒がいるのにも関わらず大声で説教を始めました。  
この出来事でC先生はひどい屈辱を受けることになってしまいます。  
必要書類の作成というミスに対して大声での説教は不釣り合いであり、加えて、わざわざ生徒の前での説教もおこなっています。書類作成忘れのミスであれば、次回忘れないためにどうすればよいか?という観点が大切です。周りに生徒がいる中で、わざわざ大声で説教をする精神的な攻撃がミス改善の解決策になるとは考えにくいと思います。  
 

教員に対する人間関係からの切り離し

職場の人間関係から隔離する行為もパワハラの6類型に該当します。具体例としては以下のとおりです。  
 
  • ●仕事に必要な情報共有をおこなわない
  • ●あからさまに無視をする
  • ●忘年会や新年会といった業務外の行事に呼ばない
 
例えば、授業参観日のスケジュールに変更がある際、E先生にだけその旨を伝えないケースです。E先生はスケジュールの変更を知らなかったことが原因で、授業参観日の当日になって重大なミスを犯してしまいました。  
このように、本来属さなければいけないグループからの隔離や除外も人間関係の切り離しです。  
さらに例を挙げると、教員間での無視や仲間はずれも該当します。例えば、業務について訪ねているのにも関わらず一切答えないというケースです。  
人間関係の切り離しのケースは、陰湿であることが多く、第三者からの発見が遅れることも珍しくありません。  
 

教員に対する過度な要求

(必要な教育を行わず、高い業務目標を課し、未達成の際は厳しく叱責) 相手の能力を大幅に超えた要求等もパワハラの6類型に該当します。過度な要求として代表的なものだと、以下のようなケースです。  
 
  • ●就業時間内では終わらない量の仕事を強制させる
  • ●マニュアルに載っていないことを要求する
  • ●業務とは関係のないことを任せる
 
例えば、新人教師であるF先生に対して、ベテラン教師であるG先生が教わってもいないような仕事を押し付けて帰ったとします。  
F先生は業務に関して何も教わっていないので、手をつけることができません。翌日、手がつけられていない仕事を見たG先生はF先生に対して激怒しました。  
この場合、新人教師であるF先生の能力以上の仕事を押し付けたことが該当します。さらに、G先生はF先生に対して激怒したことも、パワハラの悪質さを加速させる原因になります。  
 

教員に対する過小な要求

(嫌がらせで仕事を与えない) 前項とは反対に、相手の能力を大幅に下回る仕事しか与えないこともパワハラの6類型に該当します。具体的には、以下のようなケースです。  
 
  • ●会議に参加させず、掃除ばかりさせる
  • ●自立できる能力があっても補佐ばかりさせる
  • ●一切仕事を与えない
 
例えば、教師になって5年が経ち、1人でもあらゆる業務をこなせるH先生がいたとします。しかし、出来の良いH先生をよく思わないI先生は、H先生に対し校内の掃除だけをするように命じました。  
やりがいを感じなくなったH先生は教員を辞めてしまった、というケースです。  
この場合、1人でも業務をこなせるというH先生の能力に対し、掃除という仕事しか与えなかったI先生は行為が該当します。さらに出来の良いH先生をよく思わなかった、という不純な動機もあるため、故意で悪質な事例といえます。  
 

教員に対する個の侵害

(性的指向・性自認、病歴、不妊治療等、機微な個人情報の暴露等)  
以下のようなプライバシーの侵害も、パワハラの6類型に該当します。  
 
  • ●休日の過ごし方を無理に聞く
  • ●カバンやデスクの中などを勝手に見る
  • ●就業時間外に過度な連絡を取る
  • ●個人情報をしつこく調べる
 
例えば、J先生と食事に行きたいK先生は就業時間外であるにも関わらず、K先生に対して何度も電話をかけたとします。J先生は何度も電話をかけてくるK先生に嫌気が差し、職場に行きづらくなってしまいました。  
結果的に、J先生は教員を辞めてしまったというケースです。  
この場合、就業時間外に過度の連絡をしたので、その時点で個の侵害といってもおかしくはありません。さらに、J先生を退職にまで追い込んでいるので非常に悪質です。  
 
 

パワハラを減らすために学校側がやるべきこと

労働施策総合推進法では、職場におけるパワーハラスメントについて事業主に防止措置を講じることを義務付けています。併せて、事業主に相談したこと等を理由とする不利益取扱いも禁止されています。  
パワハラを減らすためには、学校側の意識が重要になります。そのため、最低限、以下の内容を確認しておくと良いでしょう。  
 
 
ハラスメントを防止するために講ずべき措置  
 
  1. 方針等の明確化及びその周知・啓発
  2. 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
  3. 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
  4. 1~3までの措置と合わせて、相談者・行為者等のプライバシーを保護すること、その旨を労働者に対して周知すること、パワハラの相談を理由とする不利益取扱いの禁止
 
つまり、パワハラに対する「方針の明確化と周知・啓発」「相談体制の整備」「被害を受けた教職員のケア」や「再発防止」について、適切な措置を取ることが求められているのです。  
公立学校には行政機関に窓口が設置され、方針や体制が整備されているケースが殆どなのですが、私学はまだ設置されていないケースも目立ちます。  
 
 

教員一人ひとりを観察しておく

学校組織は上記体制を整えると共に、教員一人ひとりを観察して、パワハラを起こし得る教員がいないか確認する必要があります。パワハラを起こす人の特徴には主に以下が挙げられます。  
 

熱心さが行きすぎている人

教員は熱心であることも重要ですが、行きすぎは注意が必要です。  
例えば、ベテラン教員が熱心に初任者へ指導しすぎるがあまり、怒鳴ったり、胸ぐらを掴んだりしてしまうケースです。本人にはパワハラの意識がなくても相手は恐怖や不安を感じています。  
 

完璧主義な人

完璧主義な人間は他者にも完璧さを求めてしまいます。他者の能力が低かったり、できないことが多かったりすることに苛立ちを感じて、パワハラに発展するケースも珍しくありません。そのため、過度な完璧さを求める人には注意することが肝心です。  
 

感情のコントロールが苦手な人

感情のコントロールが上手くできないと、自分に思わしくない出来事があった場合、理性より本能が優位な状態になってしまいます。そうなると攻撃性や防衛本能が高まってしまい、相手を攻めやすくなってしまうのです。  
 
 

パワハラで被害者が悪いという視点を捨てる

パワハラ問題において、被害者が悪いという視点は捨てるべきです。パワハラが起こるのは管理上の問題があるからです。  
被害者の能力の低さがパワハラの原因であれば、その能力に見合った指導が必要になります。能力が無いから怒鳴ると言った指導では短絡的ですし、指導力の無さが露呈しています。  
 
パワハラの背景には一時的な感情問題だけではなく、倫理観の欠如した一部の教職員らが計画的にいじめ構造を敢えて作っているケースも認められます。 思想・信条・人種等の違いから原因不明のパワハラ被害に遭っている教員はこのような背景にも注視する必要がありますし、学校側もこの構図を知っておく必要があるのです。  
 
 

この記事は当機構が制作・発行している「学校リスクマネジメント通信」をWEB版として編集し、大幅に加筆したものです。


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