学校リスクマネジメントを教職員へ指導する際のポイント
先日、管理職向けのリスクマネジメント研修の講師をしました。内容は、どの様に学校のリスクマネジメントを職員に指導していくのか?というものです。
今回のニュースレターは、この研修内容の一部をお伝えしたいと思います。
1.全体像の理解が大切
職員にリスクマネジメントを伝えるためには、まず、リスクマネジメントと危機管理の違いやハザードと呼ばれる危険な環境や要因についての考え方を示します。そこを示さないでいると、職員がトラブル発生時の対策を講じても漏れやダブりが出てしまうため、効果が半減、もしくはダメージを現状よりも拡大させてしてしまうことになるからです。
要するに、トラブル発生時に間違った対応を講じてしまうということです。
この違いを理解することで、校内でトラブルが発生した時に、「今は、リスクマネジメントをすればいいのか?危機管理をすればいいのか?それとも両方を実施しなければいけないのか?」ということが考えられるようになるのです。
また、トラブル発生時には様々なダメージが発生しますが、そのダメージについて多様な視点と対策の切り口を持っていないと講じる手段を誤ってしまします。ダメージの視点としては、最低限、下図のような切り口の理解が必要です。
この考え方を知らないと、どんなに迅速な対応をしても、漏れやダブりが生まれてしまうため、効果的な対策は講じれらません。そうするとトラブルが拡大し、益々ダメージを受けてしまうのです。
よくある失敗は、法的な対策を優先したことから感情的なダメージというリスクへの対策が漏れてしまい、周囲の批判が増大し、学校の評判が更に悪くなってしまうケースです。多様なダメージを想定できないと、学校のブランドは大きく毀損してしまうのです。
そして、対策の切り口としては、
①影響度を抑える=リスク軽減
②発生頻度を抑える=リスク低減
③活動をやめる=リスク回避
④対策をせずに受け入れる=リスク容認
といった選択肢があります。これを知らないと、講じる対策に漏れが生じやすくなってしまうのです。職員には最低限、このようなリスクマネジメントの知識が必要です。
2.平時にリスクを想定しておく
この「リスクを想定しておく」という言葉は、最近はよく使われるようになってきましたが、簡単な演習でも効果は絶大です。まだリスク想定が出来ていない学校は、この機会に演習をしてみると良いかもしれません。
★簡単なやり方
①白紙に今後想定されるトラブル等の端緒であるハザード(危険や環境や要因)とリスク(損失の可能性)を箇条書きにする。
例=○○の状況(ハザード)があるので近い将来○○○(リスク)が生じてしまうかもしれない。
②想定したリスクに対しての解決策を書く。
例=○○を実行する。(軽減策)○○を実行する。
(低減策)等
これをグループで行い、それぞれ発表し、考え方をシェアします。この作業をすることで、視点が異なる様々なリスクや解決策が洗い出されるはずです。つまり、学校の考えられるリスクを想定することができ、対策まで考えが至るということです。
そして、この作業をブラッシュアップしていくことで質を高めることができるので、是非、実行してみて下さい。どんなことが起きても1度対策まで考えているリスクであれば、落ち着いて対処することができるのです。
私がこの作業を勧めるのは、『想定できないことは管理(コントロール)できないから』です。
想定外のことは残念ながら準備ができていないので『対応』しかできません。ここでいう『対応』とはトラブル発生時の対策が後手に回ってしまうということ。そのため、危機管理の効果は必然的に弱まってしまうのです。
効果が弱まるということは、子どもや学校が被るダメージを逆に拡大させてしまうということと同じです。この意味をよく考えると、この作業は単純ではありますが、極めて重要な危機管理対策ということが理解できると思います。
この作業は個人でも学校全体でもすぐに実行可能です。これを実行するのかしないのか?
あなたの決断で学校の未来が変わります。
この記事は当機構が制作・発行している「学校リスクマネジメント通信」をWEB版として編集したものです。