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学校リスクマネジメント推進機構|学校と教職員向け危機管理相談
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激しいクレームが継続し 対応に困るときの選択肢

今回は激しいクレームへの対応方法について触れていきたいと思います。
激しいクレームはどこの学校でもあると思いますし、継続すると非常に大変です。生じる影響も極めて甚大であり、下手をすると学校全体が疲弊してしまい、教職員の休職や退職にも繋がっていきます。そして、この影響が様々な形で在校生や他の保護者へ波及し、新たな問題を作り出していくのです。私が知っている学校でも教員数名が休職に“されて”しまい、その結果、クラスが荒れ、子供たちの暴力事案が発生してしまいました。更にそのことで保護者間での激しいトラブルが生じてしまったケースがいくつもあります。

当機構への相談は、このようにトラブルが大きくなってからが多いのですが、その頃の学校の状況はかなり深刻です。
拡大したこれらのトラブルを別々に学校は対応するのですが、元を辿れば1名の保護者のクレームが原因であることが多いのです。勿論、その背景には児童生徒等の問題があります。
では、激しいクレームが継続している段階における学校の選択肢はどのようなものがあるのでしょうか?今回は毎日のように電話が掛かってくる場合の選択肢をご紹介したいと思います。

◆毎日の様に電話が掛かってくる


このような状況の1番のリスクは、担当の教職員が疲弊してしまうということです。この状態が継続すると先述したような休職や退職等に影響が拡大してしまいますので、極めて大きなリスクとして認識する必要があります。
ここでは、リスクの大きさを下げるための対策を3つ考えてみます。

① 電話対応の「頻度(回数)」を減らす


特定の保護者からの生産的はでない電話に全て対応する義務はありません。状況に応じて当該保護者の電話よりも他の業務を優先することは必要不可欠です。それは、電話に出るたびに疲弊し、自分の心身に悪影響を与えることが分かっているのであれば、この問題は大きなリスクだからです。

大きなリスクであれば、個人としても学校としてもリスクマネジメントを行うことは当然です。生産性の無い電話に対応し続けて心身を蝕み、子供達を残して休職することと、自分の心身の健康を維持しながら、子供達に良い授業を行うことと、どちらが「子供達のため」になるのか?ということを判断基準にすると良いと思います。状況によってですが、10回の電話の内半分は対応しない、3分の1しか対応しないなど、方法は色々あると思います。対応の頻度(回数)を減らせば、自分が受けるダメージが減り、逆に自分が使う時間が増えていくのです。

② 一回の電話対応から受ける「影響度(ダメージ)」を減らす


次に電話を受けてからのダメージをどのように最小限に抑えていくのか?ということを説明していきます。まずは「対応時間を減らす」というやり方があります。これは事前に枠組みを作ってしまう方法です。たとえば、「今から30分は時間を取れますので、この時間で○○君のために生産的な話をしましょう。」という感じです。残り時間が迫って来たら、「あと○○分程、ですのでこれは話しておきたいということがあれば遠慮なくお話ください」等と伝え、決して早く終話したいわけではないというメッセージを送ります。

次に「アンガーマネジメント」です。例えば、「保護者からの影響を受けない自分を演じる」 という方法があります。これは、電話を受ける前に「保護者の話に精神的な悪影響を受けないように、また、感情的にならないように演じよう!」と自分自身(若しくは周囲)に宣言し、約束をしてしまうということです。大抵の人であれば自分がした約束は守ろうとしますし、演技であれば感情移入しにくくなるからです。このように自分の感情をコントロールする方法もあります。それと併せ、激しいクレーム対応があった日には必ず休息時間をつくることが大切です。

ポイントは静的休息と動的休息を組み入れる事です。例えば、音楽を聞いたり、サウナに行ったり、好きな歌を歌ったりすることは静的な休息です。一方、マラソンをしたり、散歩をしたり、ゴルフをしたりするのは動的休息です。これらを意識的に日常生活に取り入れることで必要な脳内物質が放出され、感情のコントロールがしやすくなり、結果的に受けるダメージが減っていくのです。

③ 対応の「頻度(回数)と影響度(ダメージ)」を減らす


何度も電話が掛かってきて、その上、対応時のダメージも大きいクレームの場合は、敢えてこちらから相手にアポイントを促す方法があります。毎日の電話に困っているのであれば、10日後に当該保護者と直接会って話す旨の約束をした場合、その日までの保護者からの電話がゼロになる場合もあります。(勿論、相手にもよります)この方法を選択肢の1つとして知っておくことは大切です。そして、会った時には、保護者に問題解決の気持ちでは負けないように自分を奮い立たせ、例えば、相手が話を終えて帰ろうとしても「まだ帰らないでください。もっと子供のために解決方法を徹底的に考えましょう。

まだまだ時間はありますから。」と声を掛けてみる方法もあります。これは相手が帰りたい時にそれを学校が拒む訳ですから、一般的な方法ではないのですが、保護者からすると「帰りたいのに帰らせてくれない」といったマイナスの経験を学校で積むことになるのです。これは電話にも応用することができます。要するにあなたや学校と話をするのは嫌だという経験を保護者はすることになるのです。

この方法のポイントは、逃げたり、保護者に対応の不備を指摘されたりして嫌だと思われるのではなく、むしろ「保護者のしつこさや一生懸命さを遥かに超越する程の情熱をもって対応する」ことで子供達のために相手と徹底的に真剣に向き合うということです。無意味なしつこいクレームには、相手が根負けするくらいのパワーで対処する逆張りの方法があることも、特に管理職は選択肢の1つとして覚えておくと良いと思います。

今回、ご紹介している方法は、全ての保護者に有効なものではありませんが、学校側の選択肢として頭に入れておいて頂きたいものです。
状況によってはすぐに実行ができないものや、ある程度の対応力が求められる方法もあるかと思いますが、激しいクレームに困り果て、対策が頭に浮かばない時に、是非思い出していただければと思います。



この記事は当機構が制作・発行している「学校リスクマネジメント通信」をWEB版として編集したものです。


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