学校の安全を守るためにどうすればいいのか
学校経営者にとって、 「学校の安全を守る」ことは最優先事項であることは論を待たないでしょう。では、学校の安全を守るとはどういうことでしょうか。そもそも、学校の安全を晉かす危機にはどのようなものがあるのでしょうか。
いじめ、保護者クレーム、教職員の不祥事、情報漏えい、学校内での子どものけが・事故、不審者の侵入、地震、火災、その他自然災害による建物の損壊なども考えられます。
最近相談が多いのは、保護者からのクレームです。情報漏えいや、教職員の不祥事など、すべてのトラブルに起因し、対応を誤ったために、訴訟問題にまで発展し、苦労をされている学校も実際にあります。
こうした問題に対し、どのような対応を講じればいいのでしょうか。
「リスクマネジメント」と
「クライシスマネジメント」
学校の安全を守るには、 「リスクマネジメント」と「クライシスマネジメント」という二つの考え方があリます。今回は、まずこのことについてお話したいと思います。
「リスクマネジメント」は、危機が発生しないためにはどうするかを考えること。もちろん、地震などの自然災害はコントロー ルすることができません。しかし、コントロー ルできるものは、未然に防ぐための対策を講じましょうという考え方です。
ここで忘れないでほしいのは、残念ながら危機をゼロにすることはできないということです。車の運転を考えてみてください。いくらあなたが安全運転を心がけていても、対向車線から車が突っ込んできて事故に巻き込まれる可能性はないとは言えません。でも、安全運転をしていれば事故のリスクは確実に減らすことができます。それと同じなのです。
では「クライシスマネジメント」とはどういう意味でしょうか。「クライシスマネジメント」とは、発生してしまった危機の影響を、なるべく小さくするためにどうするかを考えることです。たとえば起こってしまった事故はどうすることもできませんが、影響を小さくすることは可能なのです。
危機の影響とは、どのようなものがあるでしょうか。
①人の生命、身体へのダメージ
②精神的ダメージ
③時間的ダメージ(対応のために費やす時間)
④金銭的負担(損害賠償、器物の破損、その他目に見えないもの)
などです。
目に見えない金銭的負担とは、たとえばマスコミ報道されブランドに傷がつく、教職員のモチベーションが下がる、評価が下がるなどです。
学校で職員が不祥事を起こした、いじめで生徒が自殺をしたといった場合、その翌年の入学者数が激減したという学校は実際にあるのです。
最も大事なのは、
初期対応
さて、リスクマネジメントとクライシスマネジメントの定義はおわかリいただけたでしょう。
では、それぞれ具体的にはどのような対策があるのでしょうか。それをまとめたのが右上の図表です。
リスクマネジメントの具体的な対策については、多くの学校でこの中のいくつかは実施されているのではないでしょうか。ただし、マニュアル作成については、作ったものの実際に使われていない、前任者が作ったまま放置されているといったケースもあるかもしれません。
避難訓練については、形骸化していていざ本当に危機が起こった時に役立たなかったという例もあります。これらを有用なものにするためにどうすればいいかは、また別の機会に述べます。
今回注目していただきたいのは、クライシスマネジメントです。これらは、実際に危機が発生したときにはすぐに必要となる対策ですが、多くの学校では、あまリ経験もノウハウもないのではないでしょうか。
中でも、初期対応は大変重要です。初期対応でつまづいたために、小さなトラブルが大きくなり、訴訟問題にまで発展したというケースは少なくあリません。そのようなことにならないためにはどうすればいいのでしょうか。
次回は、その点についてお話しましょう。
この記事は当機構が制作・発行している「学校リスクマネジメント通信」をWEB版として編集したものです。