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子どもは未発達な存在という前提で 支援する気持ちが大事

今回は、当機構マネジャーであり、元警察官の上原和吉氏に、現役時代に扱った学校事案などについてインタビューをしました。

子どもは未発達な存在という前提で
支援する気持ちが大事


――上原さんは、警視庁新宿警察署生活安全課(課長)、警視庁(本部)生活安全部少年事件課(管理官)などを歴任し、学校事案も数多く担当していますが、印象的だった事案を聞かせてください。


上原
ある中学校の男子生徒が、朝学校に行くといって家を出たのち、踊り場から飛び降り自殺を図るという悲惨な事件を担当したことがあります。
学校を捜査したところ、アンケートや聞き取り調査により、生徒のほとんどは自殺した生徒がいじめにあっていたことを知っていて、知らないのは教師だけでした。こうして、生徒による暴行・傷害があったことが判明し立件したという事案がありました。

――このような事件を防ぐ手立てはあったのでしょうか。


上原
子どもは正直ですから、必ず普段の生活態度や服装などに「兆し」が表れます。先生方には、日ごろから生徒の様子に注意して、「兆し」に気づいてほしいですね。長く少年事件に関わってきた経験から言うと、とくに中学2年頃から子どもが変わることが多いような気がします。子どもの変化の「兆し」に気づいたときに、学校、教師、親はどう対処すべきか、自分なりに考えておく必要があります。ただし、対処法は一つではありません。
育った家庭環境、子どもの性質などによってまったく異なります。。



――一人ひとりの性質を見抜き適切に対処することは簡単ではありません。なにかポイントはあるのでしょうか。


上原
いくら体格が大きくても、一人前の口を聞いても、相手はまだ未発達な子どもであることを忘れてはいけません。生意気な口をきかれてカッとして叱りつけるといった対応は危険です。相手の話をよく聞いて、大人としてどう手助けするかというスタンスで向き合わなければなりません。

――なるほど、子どもは心が未発達だと認識することが大事なのですね。

上原
そのとおりです。そうすると、おのずと対応の仕方も変わってくるはずです。自分が子どものときの気持ちを思い出してみてください。
上からの目線で見ないで、子どもの目線で見てあげることが大事です。

――少年事件で逮捕された子ども達はどのような様子なのでしょうか。


上原
反抗的な態度を取る子、すぐ反省する子、泣く子、黙る子、千差万別です。しかし、うちとけて話すようになると顔がほころんで子どもらしい明るい顔になる。そこから本当の問題は何なのかを聞き出していきます。
本来彼らはかわいい子どもたちなのです。成人と子どもの違いはそこです。だから少年事件の場合は保護処分が優先されるのです。
警察は事実を知るのが仕事ですが、少年事件の場合は、未発達な子どもを救ってあげるという側面もある。その両面がなければ子どもの更生にはつながりません。

「私は聖職たる教師なのだ」という自覚を
常に忘れない


――学校の先生の事件についてはどうですか。逮捕された場合どのような扱いを受けるのでしょうか。


上原
先生であっても一般の方と扱いは同じです。
ただ社会的制裁が大きい。多くの人は教師は聖職だと思っています。それを裏切るわけですから、世間が許しません。マスコミも面白おかしく報道する。
先生も人間ですから、小さなトラブルを起こすことはあると思いますが、「自分は教師なんだ」という気持ちを忘れてはいけないと思います。



――学校に対し、さまざまなトラブルを未然に防ぐためにどうしたらいいかアドバイスを。


上原
教師と保護者、教師同士、そして、生徒を含めて日ごろからコミュニケーションを取ることや、それがしやすい環境づくりが大切です。また、教師は、1人で悩みを抱え込まず、管理職に相談してください。そのためには風通しのいい組織づくりが必要です。また、警察などの専門機関とも相談しやすい関係を日ごろから作っておくことも大切だと思います。



この記事は当機構が制作・発行している「学校リスクマネジメント通信」をWEB版として編集したものです。


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