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地震災害の実態

8月27日、都内私立学校に当機構認定講師の髙橋幸基氏が招かれ、「地震災害の実態と対応のポイント」と題した講習会が行われた。高橋氏は、航空自衛隊にて、救難機(ヘリコプター)機長等の経験があり、退官後は大手危機管理会社で防災、緊急事態対応などのコンサルタントなどを歴任。現在も、企業、団体、学校などでコンサルタントや講演活動等を行っている。
今回は、【1】地震災害の実態、【2】予防対策例、【3】対応のポイントについてお話しいただいた。

【1】地震災害の実態


阪神淡路大震災等の例を挙げながら、お話いただいた。
地震災害の特性としては、以下のようなものがある。
1)突発的である
不意突然に建物倒壊、地滑り、液状化、ライフライン寸断、火災等が発生する。
2)複合し連鎖的に大規模災害になる
たとえば、建物倒壊⇒火災⇒初期消火の失敗によって広域火災に、あるいは、津波の襲来⇒人・車・家屋の流出⇒鉄道・道路の分断⇒地域の孤立化、というように、広域的に多箇所で同時に被害が発生する。
3)拡大の危険性がある
たとえば、建物の下敷き⇒発災直後の救助不能⇒蘇生困難など、一つの事故から被害が拡大する。
4)環境の異常性
多くの人にとって初めての経験で、放心状態になるなどし、逃げようとしない、あるいは逃げようとしても逃げられない状況になる。
5)ライフラインの機能停止
交通、電気、水道、ガス、通信回線の寸断。
6)災害症候群などの発生
急性ストレス障害(ASD)、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、惨事ストレス(CIS)や、災害のショ ック、避難生活の疲れ、復旧活動による疲れ等に伴う関連死など。

【2】予防対策例


予防対策例についても詳しくうかがったが、以下、とくに強調したいところだけを挙げておく。
地震災害時には、キャビネットやロッカーなどは凶器に変身することを念頭に置かなければならない。固定しないキャビネットは倒れたり滑ったりするだけでなく、数メートルも吹き飛ぶことがある。また、ガラスが建物から落下するときは尖った方が下になって落ちてくる。上から下だけでなく水平方向にも飛散することを知っておいてほしい。ガラスは出刃包丁だという認識を持ってほしい。
対策としては、ガラスには、ガラス飛散防止フィルムを貼る。コピー機、自販機、家具類は固定する。ロッカーなどを2段に重ねる場合は、必ず固定器具で連結する。

学校を例にした場合、教室の水槽や棚に飾ったトロフィーなどは凶器となる。大人にとっては怪我ですむことも、園児、児童にとっては致命傷となることもある。
アップライトピアノは転倒しやすく大変危険。とくに、背面側に倒れやすい。ピアノの周辺が園児や生徒の遊び場や昼寝場などにならないようにするべき。
校内の、スプリンクラー、消火栓などはすべての教員が使い方や場所を知っておくことが望ましい。東日本大震災では、スプリンクラーが壊れて水が止まらなくなるという被害があった。スプリンクラーの止め方を知っている人がいなかったため被害が拡大したという例がある。

救護の用具としては、薬品、三角巾、ガーゼ、包帯、担架などのほか、三種の神器として、バール、鋸、ジャッキを用意しておくといい。
事務機器・備品などの落下・転倒・移動の防止については、東京消防庁のwebサイト内の、「オフィス家具類・一般家電製品の転倒・落下防止対策に関する指針(http://www.tfd.metro.tokyo.jp/hp-bousaika/kaguten/index.html)」が役に立つ。

忘れがちだが、理科室の薬品が火災の原因となる可能性もあるため、安全な保管について考えておく必要がある。また、有価証券、登記簿、手形、預金通帳、現金等の重要書類等の保管管理についても、だれがどのようにするか考えておくべきである。
緊急連絡の際の通信設備としては、停電に備え、アナログ回線も1本は確保しておきたい。
非常食などの生活維持のための物資の備蓄も必要。教員は、「自分の身は自分で守る」方針で。園児・児童・生徒分は、堅牢な部屋に保管。
防災用品としては、ヘルメットやブルーシートなどのほか、防塵マスクは必携。また、ペット用のトイレ砂は、非常用トイレとして便利。

【3】対応のポイント


地震災害時対応のポイントについて詳しくうかがったが、マニュアルを読むだけでなく、繰り返し訓練することの大切さ、役割分担や具体的な行動な行動計画・ルールをあらかじめ決めておくことの大切さを高橋氏は強調した。とくに覚えておいてほしいのは、教員は、指示するだけではだめだということ。たとえば、あらかじめ決められた避難経路に沿って非難する場合も、児童・生徒に「経路Aを通って避難しなさい」と指示するだけでなく、その前に教員が自らその経路の安全を確認してから非難させる。もし確認せずに生徒たちが一斉に避難したところ、障害物があって経路Aを通れなかったら、全員がUターンをしなければならず、大混乱や渋滞が予想されるからである。

「教員は、自分だけでなく、避難させなければならない児童・生徒がいることを忘れてはならない。場合によっては、自分を後回しにして子どもたちを守る立場にあることを自覚してほしい。大災害の経験はない人のほうがほとんど。経験のある人に聞いたり、日頃から、こんなときはどうすればいいかとイメージするだけでも感覚が研ぎ澄まされる」と高橋氏。
当機構で行う研修もぜひ活用していただきたい。



この記事は当機構が制作・発行している「学校リスクマネジメント通信」をWEB版として編集したものです。


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