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学校リスクマネジメント推進機構|学校と教職員向け危機管理相談
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学校として危機を意識した状況判断をする



◇Yahooニュースみんなの意見とは◇
・話題になっているニュースについて、みんながどう思っているのかを知ることができるYahoo!ニュース独自の調査です。客観的な意見として、貴校に置き換え考えてみて下さい。

◆意外と難しい危機管理と学びの両立


緊急事態宣言の全面解除から早1か月。一部の学校ではオンライン授業のみを継続していますが、多くの学校では分散登校を実施し、感染リスクを最小化させながらの対応が続いているかと思います。目配り気配りに追われる一方、現場に子ども達の元気な声や活気が徐々に戻り始めたことは、先生にとって何より大きな活力源となっていることでしょう。
このような中、授業の遅れを取り戻すことに焦点が向いている先生が実に多いのではないでしょうか。焦りもあるでしょう。しかしまずは、児童生徒等や保護者と団結できる関係性の構築にも目を向けて頂ければと思います。そうすれば危機管理の面は勿論、学習効果も期待できると思っています。信頼されない先生の授業では、児童生徒等も真剣に取り組まないと思うからです。

「絆」の構築は危機管理に留まらず、様々な側面における効果を生み出してくれるのではないでしょうか。教員としての率直な想い、それは大人の都合で急いで学力を伸ばしていく指導をすることではないと思います。子ども達の状況や理解度に逆らって、大人の都合で進めていくことは子どもや保護者に不信感を与えかねません。その不信感がトラブルの引き金になっていくことが多くあるのです。
トラブルやクレームを発生させてしまえば、学習効率にも悪影響が出るでしょう。世論やテレビ報道に影響され、思慮のないまま焦って授業を展開することは、「学び」と「危機管理」の双方で悪循環を引き起こすのではないでしょうか。今は「学校危機管理」と「学び」を分けて考えないことが大切だと思います。

しかしながら、残念なことに報道では、危機管理と学びが分離した視点で論じられることが多いように見受けられます。ここであなたが考えなければならないのがメディアリテラシーではないでしょうか。報道にすべてを感化され、そのまま意思決定をしてしまうと、時に「様々な危機を誘発してしまう可能性がある」ということを今回のニュースレターから少しでも読み取って頂ければと思っています。

◆距離を考えた解決策を目指す


ラポール(親和状態)の関係を築いていく上で、現在の社会情勢の中で気を付けなければならないキーワードが「距離」だと思います。先生と児童生徒等、また保護者の間に発生する「距離」。昨今、マスクやフェイスシールドの着用、パーテーションで机を仕切ったりと工夫を凝らした授業の光景がよく報道されています。これはクラスター感染のリスクを抑えるという視点においては一部効果的であると思います。
しかしながら、物理的な「人と人との距離」が離れることへの弊害についてはあまり報じられていません。つまりこの事象をどう判断するかは、あなたのメディアリテラシーやリスクセンス(危険を認識する力)次第ということなのです。人との距離が離れてしまうこと。それは「心の距離」をも乖離させてしまうリスクが多分に含まれているのです。

人の距離を離すという行動様式は、先生と児童生徒等のコミュニケーション量と質を低下させ、感染以外のコミュニケーションリスクについては、むしろ肥大化させてしまう可能性を孕んでいます。社会構造が急変している今、児童生徒等を取り巻く環境が変わり、行動も変容しています。分散登校では、毎日の何気ない変化や、児童生徒等の心の変動を捉えていくことが難しくなっていると思います。
登校してもお互いに、マスクやフェイスシールドを着用していれば、口角の動き等の顔の表情や、声のトーンなどの変化に気付くこと自体が難しくなると思います。児童生徒等からは、「前のように気軽な雰囲気で、先生に相談が出来ない!」「先生、今、怒っているの?」「何故か分からないけど、褒められても前みたいに嬉しくない!」と言う声が聞こえてくるかもしれません。
これは教員の気持ちがマスクやフェイスシールド等の遮蔽物によって伝わりにくくなっていると言うことです。勿論、逆も然りです。

こういった児童生徒等の気持ちが、もし表面化され始めているのであれば、心が離れる予兆、つまりリスクの種が浮かび上がっていると捉えた方が良いと思います。ソーシャルディスタンスという言葉に代表されるような物理的な距離を埋めることが良くないとされる社会構造になっているのは事実だと思います。心の距離だけでも近づけるにはどうすべきなのか、そもそも一般的な指定感染症と比べ、新型コロナウイルスの感染率や死亡率の違いはどうなのか?また、感染者数の現状等はどうなのか?という具体的な「数字」を冷静に考えて対策に繋げていく必要があるのかもしれません。

◆報道を検証する
貴校独自で行うシミュレートを行う


これらの「数字」を報道はどのように伝えているのか?若しくは伝えられていないのか?ということをよく見る事が大切です。客観的に報道と論文データ等を比較検証して、貴校の状況にそれが則しているか否かを俯瞰してみることが大切だと思います。貴校に合わせた施策を準備するのが最終的な目標なのですから、準備した施策について、メリットとデメリットを検証し、実際の数字から新型コロナウイルスのリスクを洗い出し、その上で対策をいくつかシミュレートするのが良いと思います。

「他の学校でもやっているし、報道されているから本校でもやってみる」、これでは根拠の無い施策になってしまいます。その場合、保護者から質問やクレームがあった場合、メディアリテラシーの高い保護者を納得させられる説明が出来なくなってしまいます。また、マスクやフェイスシールド等をした場合のリスクを洗い出すために児童生徒等にアンケートをしても良いと思います。児童生徒等が先生の距離感から生じるリスク。分散登校と全員登校にした場合のリスク。一方、感染者が発生した場合のシミュレートも必要です。

その場合、発熱の有無によって、学級閉鎖に留めるべきなのか?学校閉鎖にまで拡大するべきなのか?さらには、感染者が児童生徒の場合、教職員や保護者の場合のシミュレートも必要です。様々な数字を厚生労働省が公開しているページから判断し、適切な基準と対策を貴校独自でも準備しておくことがあっても良いと思います。●●%でこういう施策。○○%でこういう施策。貴校独自の視点でまず考えるべきだと思います。それを以って、文部科学省が公開しているガイドラインや報道と照らし合わせることが重要だと思うのです。
大切なのは報道や他校に合わせるのではなく、事前に想定されるリスクを様々な情報源から客観的に洗い出し、幾つかのシナリオをシミュレートし、その上でガイドラインや報道と比較検討することです。そのために、まず意識せずに目に飛び込んできた情報に対し、『一呼吸置くということ』を大切にして頂ければと思います。



この記事は当機構が制作・発行している「学校リスクマネジメント通信」をWEB版として編集したものです。


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