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学校リスクマネジメント推進機構|学校と教職員向け危機管理相談
学校リスクマネジメント推進機構

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不登校への適切な対応は学校を強くする

◆危機管理と不登校の相関関係


4月は出会いの時期。皆さんがこの春から受け持つことになる学校やクラスに、不登校やその傾向のある児童生徒等はいませんか。学年とクラスが引き継がれ、不登校児童生徒を新たに担当する先生はこう思うことが多いと思います。
「これからどういった対応をしていけば良いのか…」。これは、既に危機管理における問題の種が浮かび上がっているということです。クラスが替わり、先生が替わり環境が変わる。この時期は新たに不登校になるリスクや、不登校から引きこもりへと発展してしまうリスクが高まるということです。
この春から不登校の児童生徒等を引き継がれる先生へ。前担任との情報共有は更なる危機拡大を防ぐことに繋がります。一人で抱え込まず、管理職や学年主任の先生と一丸となって問題を捉えて頂ければと思います。

不登校になった背景やこれまでの経過、保護者との関係は事細かく引き継ぐことが大切です。いじめや先生の指導等の理由で不登校になったのであれば、裁判に発展することも拭いきれません。自殺や自傷行為に及ぶ児童生徒等も我々は沢山見てきました。
学校の責任が問われる前に、ガイドラインに沿った対応と、記録を丁寧に残しながら対応されることを推奨致します。それが危機発生時のダメージを軽減することに繋がります。

不登校児童生徒等が増加すれば、瞬く間に地域へ評判として広がり、ブランド価値や募集にも影響が出るはずです。また、不登校の保護者の傾向として最初はどうして良いか分からず担任へ相談を求めてくることが多いと思います。しかしその対応を誤ると一転して責任の所在を学校に求めてきます。学校危機管理で言うところの「クレームの発生」です。
私が今回、不登校と危機管理という視点で皆様にお伝えしようと思ったのには理由があります。以前私は高校の教員をしていたことがあります。その中心は不登校生支援。3~4月という時期は、実に多くの不登校に悩む生徒や保護者が相談に訪れました。
高校の場合、学校によって違いはあると思いますが、年間2/3の出席日数が不足した時点で留年が決まるというのが一般的です。従ってこの時期は不登校生にとって留年か、それとも他校への転編入か、辛い選択を迫られる時期になるのです。

私がもし教員や学校管理職時代に学校リスクマネジメント推進機構の存在を知っていたならば、間違いなく入会を希望していたと思います。それだけ相談に来る子どもや保護者とのやりとりというのは切迫していました。『自分の一言で誤解を生んだらどうしよう』、『その発言が発端で保護者がクレームを言ってきたら…』『「先生、リストカットしちゃったよ」と泣きながら話す生徒が次の日に命を絶つ行為に至ったらどうしよう』、そういった想起される危機に対し、当時は正直、心配で心配で心が折れそうでした。

今、言えることがあります。私は危機管理の分野を学んでようやく分かったのです。生徒への思いや指導力、問題解決力。性格的にも自信はあったのです。しかし当時はそこしか見えていませんでした。危機管理のノウハウが穴のように抜けていたのです。
クレーム対応の初動では正義感や正論を論じても問題は解決しない。感情の解決が優先だと。頭を下げたくないという教員のプライドに、間違いを指摘し正そうとする使命感。不登校生を社会に出るまでに育んできた情熱と経験があった私でも、危機管理のロジックと当機構のような心の支えがあればもっと生徒や保護者にしてあげられることがあったのではないかと昔を振り返っています。

◆不登校危機管理の未来予想図


平成30年度に文部科学省が実施した「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」が先日発表されました。不登校の定義とする年間30日以上の欠席に該当する児童生徒の割合と前年度からの増加率に思わず目を奪われました。



小学校における不登校児童の増加率が前年比28%増。単純に考察しても、この世代の小学生が数年後には中学、高校と進んでいく訳ですから、この事象自体が教育業界全体のハザードと考えるべきではないでしょうか。
そして学年別に見る不登校児童生徒数を分析すると更に考えるべく状況も見えてきます。



元々、不登校とは第二次性徴期を迎える小学校高学年から高校1年生で多く発生する傾向があるのは皆さんもご存じの通りだと思います。二次性徴期では、家庭環境や仲間などの集団的要因をはじめ、生理的な要素や遺伝的な問題から学校という限られた空間に対し、「不適合を起こしやすくなっている」といった見方もできるのです。また発達障害やHSP(人よりも繊細で敏感な性質を持つ人)といった個性に悩む児童生徒が増えてくるのもこの時期です。自我を形成していくにあたり自分と周りの違いに気付き始め、そこを受け入れられるか否かにも悩む時期であると私は経験上、捉えています。

ここで学校危機管理の視点に戻して申し上げたいことが2つあります。1つは思春期に見られる様々な問題行動。不登校だけではなく、非行、犯罪、暴力、いじめ。その対応については、発育上の背景要因を理解する必要があると思います。ここを理解しないで不登校に対する問題解決を図ったり、暴力は駄目だと正論を説くだけでは児童生徒や保護者の気持ちに応えることは難儀だと思います。危機管理支援でもトラブルやクレームの解決に最も重要視するのは「感情の解決」です。背景要因を理解するからこそ、子どもや保護者の感情も見えてくる。その感情を受け止めラポールの関係を築いてから、ゆっくりとで良いので、説得等のリーディングをしてあげてください。

そして最後に1つ。不登校が増加するのは二次性徴期であると改めて仮定するのであれば、先に申し上げた小学校における不登校の増加率。この増加した分がそのまま二次性徴期に不登校が増加する中学校や高校へ数年後、そのまま比例して襲い掛かるのではないでしょうか。これは危機の種です。更に教育改革も重なり、様々な不適合が発生する可能性も否定できません。今から、貴校独自の不登校危機管理対策に目を向けていってはいかがでしょうか。



この記事は当機構が制作・発行している「学校リスクマネジメント通信」をWEB版として編集したものです。


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