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クレーム発生時の初期対応三原則

前回は、学校の安全を守るには「リスクマネジメント」「クライシスマネジメント」という考え方があることをお話ししました。「クライシスマネジメント」とは、起きてしまったトラブルの影響をできるだけ小さくすることです。
そのために大変重要なのが、初期対応です。初期対応を誤ったために、事態が大きくなり、最悪の場合には、訴訟問題にまで発展することがままあるからです。今回はクレーム発生時の初期対応の三原則について説明します。

クレーム発生時の初期対応の三原則とは


①謝罪をする
②話を聞く
③言い訳をしない

です。クレームには一方的なものも多く、こちらの言い分も言いたくなるかもしれません。でも、初期対応の段階ではしてはいけません。なぜなら、相手は怒っているからです。いくら理路整然と話をしても、怒っている状態では、相手は聞く耳を持ちません。むしろ、こちらの言い分が正しければ正しいほど、逆上する可能性が高いのです。「怒っている相手に何を言っても通用しない」というのが初期対応の前提です。
相手の怒りを鎮め、正常な状態に戻すのが第一歩。それが①の謝罪をするということになります。
実際にあった例をお話ししましょう。ある学校の例ですが、保護者からのクレームに大変頭を悩ませ、私のところに相談に来られました。保護者から電話や来校しての苦情が6カ月も続いていて、担当者は「いったいいつまで続くのでしょうか」とすっかり憔悴しておられました。しかし、私どもがアドバイスをし、その通りの対応をしたら3日で苦情は来なくなりました。
いったいなぜ、クレームが6カ月も続いたのか。それがなぜわずか3日で収まったのか。理由は簡単です。学校が保護者に対して謝罪をしていなかった→だから長引いた、学校側に謝罪してもらった→だから保護者も納得し、苦情が収まった。それだけです。

限定的な謝罪が解決の第一歩


なぜ6カ月も謝らなかったかと聞くと、「こちらが悪いわけではないので謝っていない」と言うのが学校の言い分です。
しかし、私がここで言いたいのは、すべてについて謝るのではなく「限定的な謝罪をする」ということなのです。
つまり、「全て私が悪かったです。申し訳ありません」ではなく、「ご心配をおかけしたこと」「不快な思いをさせたこと」あるいは「わざわざ学校に足を運んでいただいたこと」に対して「申し訳ありません」と謝ればいいのです。
これを「限定的な謝罪」と言います。

目的は勝ち負けではない


理由は何でもかまいません。とにかく一度謝ることがポイントです。
クレーム発生時の初期対応の目的は、「トラブルを拡大させない」ことです。どちらが正しいか、勝ち負けをはっきりさせることではありません。まず、ここをはっきりと認識してください。トラブルを大きくしないために謝るのであって、謝罪したからといって、決して、あなたがこれまで築いてきたものが失われるわけではありません。
警察沙汰になったり、弁護士が入ってくるようなことになると、その精神的負担や金銭的負担は計り知れません。そうならないように、自分の言動を選択していくことが大事なのです。

対応の順番を間違えるとトラブルが拡大する


クレームを言いに来る人の要求は、突き詰めると、①謝れ、②話を聴け、③説明しろの3つです。クレーム対応とは、この、相手の3つの要求に順番に答えていくことなのです。要求が満たされればクレームは終わります。
ただし、順番を間違えてはいけません。①をとばして、先に③説明をしてしまう。つまり、謝罪をせずに先に言い訳をしたり、こちらの言い分を言ったり、説明を始めてしまうこと。これでは、相手の期待を裏切ることになり、相手の怒りをよけいに煽ってしまいます。

話を聴くことで、信頼関係を形成する


さて、「謝罪」をしたことで、相手の怒りがおさまったら、次は「話を聴く」という段階に入ります。
相手の話をじっくり聴くことで、「この先生は話を聴いてくれる」「悪い人ではないのだな」というふうに相手が感じることから、信頼関係が生まれてきます。
するとようやく、どうやったら問題が解決できるのか、前向きな話し合いの段階に入ることができます。
話を聴くときは、①相手の目を見て聴く、②話をさえぎらずに聴く、③相手の話すペースに合わせる、④相手の言葉に相づちを打ったり、相手の言葉をおうむ返ししたりする、などいくつかのテクニックがありますが、要は、相手の言うことを否定せずにひたすら聴くことが重要です。
相手が言いたいことをすべて言いつくしてから、「説明」や「交渉」の段階に入ります。相手の言うことを聴くからといって、言いなりになるのではありません。ちゃんと主張すべきことは主張するのです。
それについては次回に説明しましょう。



この記事は当機構が制作・発行している「学校リスクマネジメント通信」をWEB版として編集したものです。


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