夏季休業明けの危機管理/ 鈴木彰典

地域によって夏季休業の期間は異なりますが、8月下旬から9 月1 日にかけて2 学期が始まる学校(園)が多いと思います。

長い休みを過ごした児童・生徒等が2学期を迎えるにあたり、各学校(園)では予測できる危機を挙げ、その危機に迅速に対応できる体制を図っていることと思います。
今号では、夏季休業明けの危機管理を考える上で大切なことをお伝えしたいと思います。

◆生徒指導上の危機管理

夏季休業に入り、児童・生徒等は様々な生活を送ります。

毎日、自宅学習や読書などに励む。
部活動やクラブ活動などに打ち込む。
ゲームやインターネットに多くの時間を費やす。
自宅に居場所が無く、誘惑の多い場所に足を踏み入れるなどです。

規則正しい生活を送る児童・生徒等もいますが、そうではない児童・生徒等もいますので、
学校(園)では一日も早く基本的な生活リズムを取り戻すことに力を注ぐのではないかと思います。

また、ゲームやインターネットに多くの時間を費やした児童・生徒等については、何かトラブルに巻き込まれていないかを疑ってみることが必要です。

もし、何かトラブルが発覚した場合は、保護者に連絡したり、事件性が疑われる場合は警察にも相談する必要があります。
誘惑の多い場所に足を踏み入れた場合は、学校だけで抱え込まずに家庭や関係機関と連携を図り、適切な指導・支援を行う必要があります。

そして、不登校(気味)の児童・生徒等への支援や自殺願望のある児童・生徒等への支援が不可欠です。

毎年、夏季休業が明ける8月下旬から9月上旬は、児童・生徒等の自殺者が増える時期と言われておりますので、警戒レベルを上げることが必須です。

夏季休業期間をどのように過ごしたのか、学校は把握しきれないことが多いと思いますが、心配な児童・生徒等への家庭には定期的に連絡を入れるなどして、出来るだけ多くの情報を集めて2学期の指導・支援に生かすことが大切です。

◆健康上の危機管理

残暑が厳しい時期に2学期が始まりますので、心身の健康を崩す児童・生徒等が見受けられます。

例えば、熱中症や夏バテなどの症状を訴えて保健室に駆け込むことがあります。

また、昼夜逆転した児童・生徒等は睡眠不足で体調を崩し、保健室で休むことがあります。
さらに、家庭内のトラブルや友達関係のトラブルなどを抱えた児童・生徒等は、精神的に不安定になります。

悩みを相談できれば良いのですが、誰にも相談できないまま自分では抱え込むことができなくなり、学校から足が遠のく児童・生徒等が出てきます。

そして、疎外感を感じ、不安を解消するためにリストカットやオーバードーズなどを行う児童・生徒等も出てきます。

児童・生徒等の健康管理は、担任や部活動の顧問だけではなく、管理職や養護教諭も含めて学校(園)全体で情報共有を図り、家庭とも連携を図りながら適切に対応することが必要です。

◆教職員の危機管理

教職員の不祥事が後を絶ちません。

各学校(園)では、機会を捉えて管理職から不祥事防止に向けた指示・伝達等がなされたり、倫理確立(危機管理)研修を通して意識の醸成を図っていることと思います。

ほとんどの教職員は意識を高く持って職務を遂行していますが、心に響かない一部の教職員がいることを非常に残念に思います。

夏季休業中の教職員の様子を把握することは難しい面もありますが、何気ない会話や職員室内の様子等から、言動や行動に変化が生じていないか職場で感じ取ることが必要です。

過去には、夏季休業中に法に触れる事案で逮捕された教員がいましたが、管理職のみならず同僚職員は全く気づかなかったとのことです。

その学校は、急遽、臨時保護者会を開催しましたが、学校の情報量が不足していたために保護者を十分に納得させることが出来なかったそうです。
不祥事を起こす人は二面性を持っていることがありますので、中々、見抜けないことがあります。

しかし、一度不祥事が起きますと、事後の対応に苦慮しますので、職場内で孤立したり対立したりしないよう、職場内の良好な人間関係づくりを構築することが大切です。

また、初任者や問題を抱えた学級の担任などがメンタル面で不調をきたしていないか、管理職はもちろんのこと、初任者指導担当や学年主任などが気にかけながら状況把握に努めることが必要です。

教員は責任感の強い方が多いので、他の教職員の力を借りずに自力で解決しようとする傾向があります。
しかし、現実は自分の思い通りに進むとは限らず、問題がさらに深刻になってしまい、周囲が気がついた時には、解決が難しくなってしまっているという場合もあります。

夏季休業が明け、授業、学校(園)行事、大会・コンクールなどが目白押しになり、息つく暇がない日常が始まる時は、教職員のメンタルの不調を十分に把握する必要があります。

管理職、学年主任、養護教諭、保健主事、衛生推進(管理)者などが中心となって教職員の様子を把握するとともに、相互に情報共有を図り、不安を抱える教職員を支える体制を構築し、多くの成果を収める2学期になって欲しいと思っております。

◆施設・設備面の危機管理

9月1日は防災の日ですので、避難訓練や防災の取組みなどを実施する学校(園)が多いのではないかと思います。

ご存じの方も多いと思いますが、9月1日が防災の日と制定されたのは、1923年(大正12年)9月1日の午前11時58分に起こりました関東大震災が由来です。
発生時刻がお昼時だったため、火災による焼失のほか、揺れによる倒壊、液状化による地盤沈下、土砂災害などで10万5000人余りの方が被害に遭われました。

沿岸部では高さ10m以上の津波も発生しました。
地震大国と言われる日本は、その後も大きな地震が起きており、最近では防災教育に取り組む学校(園)が増えております。

防災の日を迎えるにあたり、施設・設備の安全点検を行い、修理・修繕箇所の有無を確認することは不可欠です。
学校(園)は安全・安心な場所でなければならず、施設・設備の管理に落ち度があると、学校(園)の安全管理責任が問われることになります。

今年は関東大震災が起きてから100年に当たります。

節目の年になりますので、例年以上に施設・設備面に目を光らせ、自校(園)からは施設・設備の事故を絶対に起こさないという強いメッセージを発したらいかがでしょうか。

◆おわりに

夏季休業明けに向けて、各学校(園)では心配な点が尽きないと思いますが、危機の未然防止に努め、教育(保育)活動が順調に展開されることを願っております。

 

 
 

※この記事は当機構が制作・発行している「学校リスクマネジメント通信」をWEB版として編集したものです。編集者 元公立小学校・中学校 校長 鈴木彰典

 

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