
東京女子学園危機管理インタビュー
本年最初の学校リスクマネジメント通信は、東京女子学園理事長・校長の實吉幹夫先生に、当機構の会員になってのご感想などをうかがいました。
大切な共同体をいかに守っていくかが
学校の危機管理
――最初に御校の強み、学校として大切にされていることを教えてください。
實吉先生
本校は、明治36年に開校した、東京府下で初の普通科の私立女子高等学校です。開校当時は、女性の教育といえばお裁縫やお稽古事が中心でしたが、日本社会の近代化に伴い、各分野で活躍する有能な女性を育成するべく、棚橋一郎、棚橋絢子らによって設立されました。今、グローバル教育が話題になっていますが、本校では当初から英語教育に力を入れており、他校に先駆けて昭和55年よりアメリカ3週間のホームステイを実施しています。キャリア教育にも力を入れ、主体的に自分の人生を切り開いていける女性を育てていきたいと思っています。
――「教養と行動力を兼ね備えた女性(ひと)の育成」という建学の精神が100年以上の長きにわたって守られてきたのですね。先生は、学校の危機管理をどのようにとらえておられますか?
實吉先生
本校の教育理念は、「人の中なる人となれ」です。ここには、自分の命を大切にし、他人や社会のために何ができるかを考え、独立・自尊心を持って生きていってほしいという願いがこめられています。私学はみな、このような理念(ミッション)を持って運営されています。その意味では、全ての私学はミッション・スクールだと思っています。
学校は、同じ理念を、生徒、保護者、教員、卒業生、みんなが共有する理念共同体なのです。危機管理とは、この大切な共同体をいかに守っていくかということだと思います。
危機が起こってから対処するのでは
遅すぎます
――このたび当機構にご入会いただいたきっかけは?
實吉先生
学校を取り巻く問題が多様化し、降りかかる火の粉が多くなり、子どもたちの安全や学校の評判を自分たちだけで守ることが難しくなってきたからです。危機が起こってから対処するのでは遅すぎます。また、管理職だけでなく、学校全体で情報を共有し、危機管理意識を高める必要性を感じていました。学校全体で取り組むためにも、専門家に協力をいただくほうがいいと考えたのです。公立校なら教育委員会がありますが、私学には守ってくれるものがありませんから。

豊富な事例から、学校の危機を疑似体験でき、
危機への対処スキルが向上
――ご入会されて感じるメリットは?
實吉先生
まず、機構で出版された『すごい!保護者クレーム対応マニュアル』を全職員が読んで、危機管理とはなにかという問題意識を共有できたことですね。これによって、学校全体の、危機管理の方向性が定まったと思います。入会することで本を読む意識も高くなります。
また、窓口の教頭からは、具体的な事例を紹介しながら対処法を説明してくれるので、危機への対応力が上がった、問題が起こる前に早期発見する姿勢が身についた、そして、いざという時に相談できる場所があるので、優先順位を考えながら冷静に対応できるという心強さや安心感がある、との声がありました。
学校という特殊なフィールドに強いことや、学校に詳しい機構の弁護士がいることも大変大きな安心です。弁護士にも専門領域がありますから。
――学校の危機管理で大事なことは何だと思いますか?
實吉先生
まずは、私学にとっての“危機”とは何かを意識すること。私学の危機とは、世間の評判を落とすことです。保護者から支持される学校、生徒たちが通って満足してくれる学校とは何か、そのためには何をするべきか、それを考えることも危機管理です。万一訴訟が起こったときの法的知識を学んでおくこと、何か起こったときの対処方を学校全体で考え共有しておくことも危機管理です。
病気と同じで、予防や初期治療が重要。起こってからでは遅いのです。
この記事は当機構が制作・発行している「学校リスクマネジメント通信」をWEB版として編集したものです。